アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第10章(2)

むらパンチャーヤット

 むらパンチャーヤットは法の執行を委託されているから、司法パンチャーヤットを別に設ける必要はない。貧しい農民に村から出て、苦労して得たお金を費やしながら数週間や数か月を町で訴訟のためにむだに過ごす必要はない。必要な証人はすべて村にいるのだし、自分じしんの係争で弁護士からしぼり取られる必要はない。もし法的にややこしい点が生じたばあいは、タルカあるいは地区から副判事が村に来て、パンチャーヤットを補佐し、難しい事件に判決を下せるようにすればよい。副判事の役割は、ガイド、友人あるいは哲学者として、無知な村人たちに国法を理解させることでもある。こうした司法制度は、簡潔で迅速かつ安上がりなだけでなく、「正義」でさえある。なぜなら民事や刑事事件の詳細は、多かれ少なかれ村では公然の秘密であり、そこに詐欺や法的マジック余地はないからだ。

*1 ‘The Hindusutan Times,’ October 22, 1945.

(p.99)
地区裁判所

 むらパンチャーヤットが、民事や刑事にわたる幅広い司法権力をもっている以上、タルカ裁判所は不要だろう。特殊な事件で、村むらから訴えがあった場合は、直接地区裁判所が受け付ける。町での争いごとも、地区裁判所が初審となる。その裁判官は地区行政官とは完全に独立で、地区パンチャーヤットが任命し、任期中は品行方正である限り罷免されない。

高等裁判所

 たいへん例外的な事件で、地区裁判所が提訴した場合は高等裁判所に預けられる。高等裁判所裁判官は行政から完全に独立で州パンチャーヤットが任命し、任期は品行方正である限り終身とする。

最高裁判所

 インド最高裁判所は国で最高の司法的権威をもつ。その機能は次の通り;

(a) 高等裁判所からの提訴を受理する。
(b) 憲法判断に関わる、連邦単位どうしの紛争から発生した事件を、初審として裁定する。
(c) 宗教に関する少数者の利益を、憲法が定める基本権を厳しく守らせることを通して保護する。

 ここの裁判官は全インド・パンチャーヤットが任命する。かれらは最高の能力と人格を備え、宗教的排他主義や党派政治とは完全に無縁の人びとでなければならず、その任期は品行方正である限り終身とする。

法律の見直し

 現行の民法や刑法は、インドの土壌にとっては外来種である。つまり複雑で難儀にすぎる代物だ。したがって、この新しい憲法のもとで、それらを徹底的に見直す必要がある。専門家による特別委員会を、この目的のためインド憲法制定会議は任命するであろう。