ガザ戦争についての陰謀論

今回のガザ戦争に関して、不可解な点を列挙するとこうなる。ちなみに、これらに関しては裏付けのソースがあり、私の憶測は入っていない;

ハマスのロケット弾攻撃は今に始まったことじゃなし、攻撃を開始する理由に乏しい。停戦協定はおたがいに守ってなかった。

・しかもハマスって、前から指摘されている通り、与党ファタハに対抗するためにイスラエルが資金援助して大きくなった政党だ。

イスラエルの攻撃のやり方は露悪的というかパフォーマンス的だった。支持の弱いハマスのためにわざわざ周りの国々を怒らせ、泥沼的状況を作ろうとしているかのようだった。

・国連安保理に停戦決議に賛成するつもりで行ったアメリカのライス国務長官は、票決10分前のオルメルトイスラエル首相からの電話で棄権に鞍替えした。まるで属国のように。

・1月19日、イスラエル軍はきわめて一方的に撤退を宣言し、大統領就任式までにそれを完了した。これもきわめてパフォーマンス的だ。そして、ガザは以前と同じ実質的な占領状態に戻って行った。イスラエルハマスの脅威をほんとうに感じていたとは思えない。

・「撤退」(というのは、ガザの封鎖は続いているからだ)直後の22日、オバマ大統領はテレビの前で演説し、イスラエル支持を鮮明にした。「はっきり言います。アメリカはイスラエルの安全にコミットします。脅威に対するイスラエル自衛権を支持します」

これらを陰謀論たっぷりにまとめるとこうだ。こっちは憶測だらけ。

@今回のガザ戦争の目的は、イスラエルオバマ政権を脅し、いわば「餌付け」することだった。攻撃開始も、明らかに大統領交替シーズンを狙ったものだ。

@つまりオバマ政権がイスラエル支持を表明、もっといえば忠誠を誓うまで惨い攻撃を繰り返す戦略だ。それがエスカレートすればシリア、レバノンヒズボラやイランといった近隣諸国が参戦する可能性が高まる。もしそうなれば、アメリカでも主戦論が盛り上がり、イラクからの撤退がおじゃんになるのはおろか、オバマは公約を破って新たな戦争の泥沼に足を取られることにもなるだろう。これは彼にとって、なんとしても避けたい事態のはずだ。なぜなら勝てる見込みがないから、とくにイランには。また、とうぜん経済の回復はいよいよ遠のく。

@ぎゃくに、イスラエルは自国が本当に侵略されるとは思っていないだろう。そのために数百発の核ミサイルを配備しているのだし。

@また、いったんオバマが支持をはっきりさせれば(これは就任式前の時点では、水面下で確定していたと考えられる。それでなくとも、選挙期間中にオバマイスラエル支持を公言している)、就任式に合わせて幕を引くようにきれいに「撤退」し、平和主義者オバマのイメージアップを助ける。まさしく「アメとムチ」のアメに当たるのがこれだ。この緊張→安心の記憶は、こんご条件反射的に効くだろう。

@もし万が一オバマイスラエル不支持を表明したら?すぐさまどちら側かの攻撃によって戦闘が再開し、ガザは地獄に逆戻りだろう。「撤退」しようとしまいと、イスラエル軍が包囲している状況に変わりはない。パレスチナにもアメリカにも制裁(ムチ)を効かせることができるのだ。

@ただ、ここでイスラエルにとって困る事態は、周辺諸国安保理の決議前に参戦してしまうことだ。ほんとうの全面戦争に突入してしまうと脅した意味がなくなるから。その場合に備えて、アメリカが停戦決議に賛成する可能性を最後まで残しておいたのではないか。賛成してしまえば、アメリカの調停に期待が高まるし、周辺諸国もわざわざ火の粉はかぶりたくないのだからそうそう動くまい。ライスの棄権は、戦火が飛び火しないことをギリギリまで確認した末の両面作戦だったのではないか。

@もう一つ予想される困った事態は、ハマスがあっさり降伏してしまうことだ。こう考えれば、ヨルダン川西岸のファタハではなく、ハマスを敵に選んだ理由も分かる。ひょっとすると昔からのよしみで内通者がトップレベルにいるのかもしれないし、そうでなくてもハマスも戦争とパレスチナの分裂によって権力を拡大し得をする側だ。イスラエルが挑発の手を休めない限り攻撃を続けてくれるだろう。

@こうしてガザやパレスチナ、中東は緊張が高まった状態でオバマに引き継がれたことになる。これは、彼が下手なことをすればイスラエルにはふたたび同じ手を使って脅すカードが残された、ということだ。オバマは言うことを聞き続けるしかなく、アメリカ政府もこれを先例とするだろう。かくして餌付けは完了したというわけだ。

・・・まったく書いててゲンナリするような想像だな。もう最悪。

しかし考えてみると、「敵の陰謀は味方の作戦、敵のスパイ活動は味方の情報活動、敵の侵略は味方の先制攻撃」なので、これら二つのあいだに境目はない。イスラエル国家の至上課題は自国のサバイバルなのだから、あんがい当たっているかもしれないな。

あとイスラエルにしても、こういう戦略を取るとすればそうとう追いつめられている証拠だ。まさしく北朝鮮の「瀬戸際外交」なのだから。さしあたりは効いても、長期的には自分で自分の首を絞めることになるだろう。