ああ属国

天木直人氏のメルマガを転載。「GHQの押しつけ憲法」と悪口を叩かれる、あの日本国憲法ですら建前上、正文は日本語(ただし読み比べれば、英文からの翻訳+日本政府による翻案であることは明白。英文の方が明確だ)なのだが。

国粋主義右翼の人には(まだいるのかな?)、ちゃんと反応してほしいねー。

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日本語の正文が作成されなかった日米共同声明

元外務省主任分析官の佐藤優氏が、自らも執筆者の一人として名を連ねている東京新聞の連載「本音のコラム」(7月2日)で、極めて重大な事を、さらりと暴露していた。

それは5月28日に発表された普天間問題に関する日米共同声明の正文が英語でしか作られていなかったという驚くべき事実である。

およそ二国間の間でかわされる外交合意文書は、それぞれの国の言葉によって二つ作成され、それぞれが同等の正文とされるのが慣例である。疑義が生じた時、それぞれの国は自らの言語による正文を根拠にして相手と交渉するからだ。

日米共同声明もまた立派な外交合意文書だ。しかも鳩山政権と引き換えに成立したほどの国民的関心の高い重要合意文書である。

その合意に日本語の正文がなかったという事は、今度の交渉がいかに異常であったかを如実に物語っている。

佐藤優氏はこれを「外務官僚の手抜き」であると一言で片付けている。

しかし、それが彼の本心でない事は明らかだ。「本音のコラム」は重要な外交問題を書くには字数が足りない。全国紙で書くにはあまりにも外務省を刺激しすぎる。

そのかわり、佐藤氏は数日前にすでに発売中の週刊アサヒ芸能7月8日号「ニッポン有事!」という自らのコラムでこの問題を詳しく取り上げ、次のように激しく糾弾していたのである。

すなわち鈴木宗男衆院議員は質問主意書でこの問題を質して来た。それに対する答弁書が6月22日付菅直人総理名で次のようになされていた、と。

「・・・御指摘の外務省による「共同声明発表(5月28日付日米合意文書)の和文は、外務省がその所掌事務の範囲内で作成した仮訳である、共同声明の正文は英文である・・・」

そして佐藤氏はこの菅直人首相の政府答弁を次のように批判していた。

「・・・内閣がぶっとぶほど重要な普天間問題に関する合意文書を外務省は英語だけで作っていた。日本は独立国だ。日本語を等しく正文とする外交文書をつくってはじめて五分と五分の国家間交渉になる。外務官僚の意識は米国占領下のままだ・・・」

同感だ。しかし佐藤氏が指摘する以上に事は深刻である。

英語しか正文がないということは、交渉がすべて米国主導で行なわれてきた事を意味する。それを外務省が許してきたという事を意味する。

そして、その事は、合意文書の解釈がすべて外務省に独占される事を意味する。

この事実は、佐藤優氏がいうように単に日本が主権国家の体をなしていないという事だけにとどまらない。ましてや外務省が手抜きをしているなどという次元の低いものではない。

普天間問題は外務官僚が米国の手先となって鳩山民主党政権を牛耳ってきたということだ。これからも普天間問題の正体を、国民はおろか政府、政治家に見せないということだ。

これは大げさに言えば外務官僚の謀反であり、日本外交の米国への売却である。

日米共同声明は間違いなく菅直人政権の対米外交を牛耳る事になる。

この事に菅直人政権が気づかなければ、菅直人政権もまた外務官僚に潰されることになる。

このような重大な事実を問題提起しない大手メディアは、よほどおめでたいか、それとも外務官僚と結託しているか、どちらかである。