BI社会を試算する

定額給付金などもあって、だんだん知名度の上がってきたBI(ベーシック・インカム)。社会保障や年金の代わりに、全員一律に基礎所得を給付してしまえ、という発想だ。

ミクシィのコミュなどでも賛否両論は盛んだが、では実際やると生活はどうなるのか、の見通しは曖昧模糊とした感じだ。たぶん物価や給与水準が動いてしまうと現在の状態からは測りにくくなるためもあるだろう。とくにBIをGDPに上積みして考えると、それはとりもなおさず貨幣価値が下落することになり、現状からイメージするのが難しくなってしまう。

そこで、非常に粗っぽいが以下のように試算してみた。

・まず、2006年の日本のGDP(単位:1兆円)は、

営業余剰・混合所得    93.5
雇用者報酬        262.6
生産・輸入品に
課される税・補助金    40.5
固定資本減耗       106.0

                                                                                              • -

合計          502.5  

となっており、これを基準に以下の前提のもとに計算する。

・物価水準や貨幣価値があまり変わらないよう、このGDPの枠を変えず、雇用者報酬のみから給与とBIを支払うと仮定。つまり、みんなの所得の合計はなるべく変えない。ただし税金や営業余剰、混合所得(個人事業の余剰)からBIに回るお金が出ないとも限らないので、この枠はやや少なめかもしれないが、安全のためこれで行く。また、税引き前の所得なので、手取りは多少変化すると考えられる。とくに、年金や退職金等の天引きは少なくなり、消費税は増えるはず。
・日本の人口は現在の1億2770万人に固定。
労働力人口もかわらないと仮定した6570万人( )と、アンケート

http://lislog.livedoor.com/r/22868

から予想される14%減の5650万人[ ]、二つの場合を想定。
労働力人口が変化しても、生産性向上やオートメ化によって総生産高は変化しないと仮定。
・BIによる所得の減少=人件費や生産費の減少=生産原価の下落となり、その分が生産物に消費税として上乗せされてBIの財源となり、物価も現在の水準で維持されている、というややおめでたい循環を想定する。

するとこうなる。

一人一年当たりBI BIの総額   雇用者報酬−BI(労働力人口当たり)[〃]

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0        0       262.6兆円(399.7万円)
60万円     76.6兆円    186兆円(283.1)[329.2]
80       102.2      160.4(244.1)[283.9]
100       127.7     134.9(205.3)[238.8]
120       153.2     109.4(166.5)[193.6]
130       166.0     102.6(156.1)[181.6]
135       172.4     90.2(137.3)[159.6]
140       178.8     83.8(127.5)[148.3]
144       183.9     78.7(119.8)[139.3]
150       191.6     71.0(108.1)[125.7]
180       229.9     32.7(49.8)[57.8]

                                                                                                                                                                                        • -

ぎゃくに現在の賃金水準400万円と、少し下がる300万円がBI抜きで平均となる労働力人口(蛇足ながら200万円の場合の労働力人口は400万円の倍)は、

一人一年当たりBI BIの総額   雇用者報酬−BI(÷400万円)[÷300万円]

                                                                                                                                                                                    • -

60万円     76.6兆円    186兆円(4650万人)
80       102.2      160.4(4010)[5346]
100       127.7     134.9(3372)[4496]
120       153.2     109.4(2735)[3646]
130       166.0     102.6(2565)[3420]
135       172.4     90.2(2255)[3007]
140       178.8     83.8(2095)[2793]
144       183.9     78.7(1968)[2623]
150       191.6     71.0(1775)[2367]
180       229.9     32.7(817.5)[1090]

                                                                                                                                                                                        • -

無理して働かないでよい、いやむしろ企業が無理して雇用しなくてよい社会では、一時的にせよ働かない人の割合は上がるだろう。たとえば年100万円がみんなに支給され、30%くらいの労働力人口が失業(あるいは休業、廃業)していると勤労所得の平均が300万円くらいとなり、独身でも働いている人の平均所得はだいたい現状維持、結婚して片働き、さらに子持ちならずっとリッチ(3人家族で一人が働く家族の平均収入は600万円)だ。

BIの意図せざる最大の効果は、結婚を早め出生率を上げることかもしれない。さいきん経営者や経済学者も関心を示しているのは、そのせいだったりして。安心してリストラや自宅待機ができる、という不景気対策でもあるだろうが。