ベーシックインカムの寓話

ある教室では、生徒が全員、毎日雑巾で掃除をしていました。先生は汚れた手の生徒に「がんばったね」とごほうびのおやつチケットを渡していました。生徒はそのチケットを持って購買部でおやつを買い、購買部は売り上げのチケットを学校に換金してもらい、それと仕入れ値との差額が購買部の収入になっていました。換金済みチケットはふたたび先生の手に渡り、一定の枚数のチケット(生徒による偽造を防止するため、用心深く番号まで打ってある)が循環しています。

ところが、雑巾がけの大嫌いなある生徒が、家から掃除ロボットを持ち込みました。生徒はらくちんなので大喜び。ロボットを持ってきた生徒も、みんなからお裾分けをもらって満足です。ところが事情を知らない先生は、生徒たちのきれいな手を見て「なんだサボりやがって」とおやつチケットを渡さなくなりました。購買部は(チケットでの)値段を上げても下げても商品が売れないので閉鎖寸前、生徒も困ったけれど今さら雑巾の時代に戻るのは嫌です。そこで生徒たちは一計を案じ、ロボットにたまったホコリを手になすり付けて「ホラ」と先生に見せました。見れば教室はきれいだし、生徒たちの宿題提出率も上がっている(じつは掃除時間にやっている)し、先生は「やっとやる気になったか」と喜んでみんなにおやつチケットを渡しました。チケットの数は変わらないので学校も変化に気づきません。購買部も再開し、めでたしめでたし。