アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第4章(9)

国際協調

 さまざまな組織が、世界平和と国際協調とを支えるために提案されてきた。国際連盟規約は国家間の係争の、調停や仲裁による解決をめざした。しかしその大伽藍は、ファシズムの暴威の前に粉々に崩れ落ちてしまった。サンフランシスコ会議では、世界平和への新たな憲章が起草された。
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しかし、その本質は「三大国」による、残る世界への支配である。合州国ソ連邦、英帝国はおのずと、提案されている国際的警察軍の「親分」となるだろう。だが、かれらの同盟内部で仲たがいが始まったら、その軍隊はいったいどうするのか?
 多くの著名な思想家が強調しているのは、国際的無秩序を廃絶するために必要なのは世界国家、ということだ。エリー・カルバートソン 1) が近年提唱したのは国際連合である。「一刻の猶予もなくうち立てるべきは、ちゃんと機能する国際機関(世界連邦)で、それは主権国家の政府からは独立であり、より高い法に基づいてすべての国家を平等に拘束し、独立した世界警察に護られ、そこではすべての国を集団的自衛力が守ることによって、各々の国もまた、他のすべての国に対して守られている。」ウィリアム・ベヴァリッジ卿 2) が「平和への対価」で主張するのは、「超国家的権威」を「三大国」の軍事力を背景にうち立てることである。サムナー・ウェルズ 3) は、広域的な世界機構をおくことにご執心だ。*2 こうしたすべての提案で前提となっているのは、集団的な安全保障と軍縮である。しかし、かれらにはこの問題に関する、真正面からの議論が欠けているのだ。
 ほとんど議論を要せず言ってよいことだが、すべての戦争の根本原因は経済的略奪や、世界市場を手中に収めようとする並外れた貪欲である。さきの戦争の後、同盟国がいま計画をあせっているのは輸出を増やすことだが、それはただ、自国の高い生活水準を維持するためなのだ。

1 ‘Total Peace’, 193.
2 ‘Time for Decision.’
1) E l y C u l b e r t s o n ( J u l y 2 2 , 1 8 9 1 - D e c e m b e r 2 7 , 1 9 5 5 ) w a s a n e n t r e p r e n u r i a l A m e r i c a n c o n t r a c t b r i d g e p e r s o n a l i t y d o m i n a n t d u r i n g t h e T h i r t i e s a n d F o r t i e s .
2) ウィリアム・ヘンリー・ベヴァリッジ(William Henry Beveridge、1879年3月5日-1963年3月16日)は、イギリスの経済学者、政治家。
3) ベンジャミン・サムナー・ウェルズ(Benjamin Sumner Welles, 1892年10月14日 - 1961年9月24日)は、アメリカ合衆国の外交官、政治家。

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この市場をめぐる帝国主義の競争は、かならずや互いの妬みや摩擦をよび、行きつくところはあらたな世界大戦、想像するだけでぞっとするような災いに終わる。だから戦争をなくすには、資本主義とその帰結である帝国主義とを廃絶するほかないのだ。「国家間の平和は」ラスキ教授はいう、「国内の平和いかんにかかっている。」*1 そして国内の平和は、公正な分配システムぬきにはありえない。そうしたシステムが盛んになりうるのは、協同組合を基礎とする地域分散化産業主義の下でだけだ。農本経済は貪欲な帝国主義へ決定的な一撃を加え、また国際協調をももたらすだろう。かくしてわれわれに必要なのは、軍事のみならず経済における軍縮である。「偉大な国家のうちに郷土や地域への忠誠が盛んであるほど、攻撃的なナショナリズムが世界を粉々に引き裂く危険は小さくなる。」

1 ‘Where Do We go From Here?’ p.125.
2 ‘A Guide to Modern Politics’ by Prof. Gole, p.370.