アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第6章

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VI
むらが基本の単位

 まえに示したとおり、ガンディー翁の願いは、自給し自治を行なうむらが基本の単位となり、自由なインドの公的行政を担うことであった。こうした提案は、この国の古式ゆかしい伝統に基づいている。小さい、あるいは隣接しあったむらの場合は、いくつかのむらからなるグループが行政の基礎単位を構成すればよい。

パンチャーヤット(参事会)

 すべてのむらは、成人全員の投票によって、ふつう5人のパンチャーヤットを選出する。大きいむらでは、人数を7〜11人としてもよい。パンチャーヤットは、全員一致でその代表者、すなわちサルパンチを選出する。もし全員の一致が得られないばあいは、むらの成人みんなで、パンチャーヤットのメンバーから代表を直接選挙する。
 パンチャーヤットの任期は、ふつう3年とされる。一人であれ複数であれ、同じ構成員が再選されて二期、あるいは三期勤めることは妨げないが、それを超えてはならない。しかし、もしパンチャーヤットのある者が任期満了より前にむらの信用を失ったばあいは、かれを投票により、75%以上の多数で解職(リコール)することができる。
 むらパンチャーヤットはただ一つの権威として、
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チョウキダール(警備員)やパトワリ(会計係)、警察官といったむらの公僕を任命し、その職務を停止し、または罷免する。
 パンチャーヤットの決定は可能なかぎり全員一致であるべきで、とくに少数者の権利に関わることがらについてはそうである。

その機能

 むらが最大限に地方自治を享受している以上、むらパンチャーヤットの機能はたいへん幅広く総合的で、村落共同体での社会・経済・政治生活のほとんどすべての面をカバーしている。たとえば:

1、 教育
(a) 小学校あるいは初等学校の運営。その教育は生産的な工芸、すなわち文化と技術を結合した教育を通して行なわれる。
(b) 図書館あるいは読書室の維持管理。図書館の蔵書は教育的で、かつむらの社会・経済・政治活動に直接関連するものであるべきだ。
(c) 大人のための夜間学校の運営。

2、 余暇活動
(a) アカダ[インドの伝統的レスリングジム]、体育館や運動場を整備する。土着の競技やスポーツは奨励されるべきだ。
(b) おりおりに芸術・工芸展覧会を開催する。
(c) すべての共同体にとって重要な祭礼を、集団で祝う。
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(d) 季節には縁日を開く。
(e) バジャンやキルタン・マンダル(祈りの朗唱)を主催する。
(f) 民謡や、民俗舞踊、村芝居を奨励する。

3、 防衛
(a) 泥棒や強盗、野生動物に対して、むらの一般的な防護に当たる村落警防団の運営。
(b) すべての市民に対し、サティヤグラーハ、すなわち非暴力による抵抗や防衛技術の定期的な訓練を実施する。

4、 農業
(a) それぞれの農地について、地代を査定する。
(b) 土地所有者から地代を徴収する。
(c) 土地資産の共有化や協同組合農業を奨励し、組織する。
(d) 灌漑を適切に調整する。
(e) 良質な種苗の供給を、協同組合のショップを通じて効率よく実施する。
(f) そのために、すべての必要な穀物は、できるかぎりむらの中で生産されねばならない。げんざいの商品作物のしくみは抑制しなければならない。
(g) 負債を再調査し、計算し直し、必要ならば縮小し、また利子率を規制する。できれば、信用組合を組織する。
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5、 産業
(a) 村で消費するカーディー(手紡ぎ手織り布)の生産を組織する。
(b) ほかの村内産業を、協同組合の方向で組織する。
(c) 酪農組合を運営する。乳牛が水牛に取って代わることを奨励しなければならない。
(d) 死んだ動物の皮を利用する、村営皮なめし場を運営する。

6、 貿易と商業
(a) 農産物ほか生産物の、協同組合による流通を組織する。
(b) 消費者の生活協同組合を組織する。
(c) 余った生産物だけを輸出し、必要だが村内で生産できないものだけを輸入する。
(d) 協同組合による倉庫を運営する。
(e) むらの職人に、目的と必要に応じて低利貸し付けを行なう。

7、 衛生と医療保健
(a) 適切な排水処理施設によって、むらの衛生を高い水準に維持する。
(b) 公害を防止し、伝染病の拡大を防ぐ。
(c) 衛生的な飲み水が得られるよう、適切に手配する。
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(d) むらの病院と助産院を運営し、治療は無料で提供する。土着の医療技術や自然療法、生物化学は奨励されるべきである。

8、 裁判
(a) むらびとに、安価かつ迅速な裁判を行なう。パンチャーヤットは、刑法と民法いずれにも幅広い司法権力をもつ。
(b) 無料の法律相談や広報活動を主催する。

9、 財政と徴税
(a) 特別な目的のために村税を課し、徴収する。現物納付や、むらのプロジェクトのための集団的な労役は、推奨されるべきだ。
(b) 社会的・宗教的な機会に個人寄付を集める。
(c) 収入および支出について、会計が適切に行なわれていることを確認する。これらは公開され、公衆の閲覧や審査に付されねばならない。

 以上、各機能をかなり網羅したリストにするよう努めた。これは読者に、広範な地方自治がわれわれのむらで、「ガンディー主義憲法」のもとで享受されるさまをイメージしていただくためである。