アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第5章

第二部

(p.77)
V
基本的な権利および義務

 第一部では、スワラジ(自治独立)憲法の根本となるべき基本原則を明らかにするよう努めた。第二部では、その憲法をさまざまな面において性格づける、おもな特色について述べる。くわしく本物らしい憲法草案を、一か条ずつ発表するつもりはない。そうした技術を要する仕事は、憲法の専門家のために取っておこう。わたしは、この冊子で概説するおおまかな特色が未来の憲法に組み込まれれば、それで満足なのだ。初っ端で明らかにしておくのがよいと思うが、この憲法案は大英帝国とはなんの関わりもない、独立したインドのためにつくられている。
 では基本権からはじめよう。市民のもつ諸権利をはっきりと列挙しておくことが、インドの憲法においてはもっとも重要だ。とくに、公共の問題が国家と対立するような場合である。これらの権利は、すべての少数者に全面的な保護をあたえるのだから、憲法には欠かせない部分である:
1、 すべての市民は法のもとに平等であり、それがカーストや皮膚の色、信条、性別、宗教、物質的豊かさによってはならない。
2、 どの市民も、その宗教やカースト、信条のために、おおやけの場で職業や報酬、貿易、商業において不利益をこうむることがあってはならない。
(p.78)
3、 非暴力の原則と公序良俗にしたがうかぎり、すべての市民は個人としての自由、すなわち言論の自由および集会・連合・議論の自由をもつ。
4、 すべての市民は、公的秩序と良俗にしたがうかぎり、良心の自由および個人的・社会的な慣習を遵守する自由をもつ。
5、 すべての市民は、それぞれの文字や言語、文化を保存し発展させる自由をもつ。
6、 すべての市民は、井戸、用水、道路、学校はじめ公共のための場所で、国あるいは地方の財源によって維持されるか、ひろく公共で使うため個人が寄贈したものに対し、使用する権利を平等にもつ。
7、 すべての市民は、「ナイ・タリム」1) の名で知られる、無料の基礎教育を受ける資格をもつ。
8、 すべての市民は、自己と自分の財産について、暴力や強制、脅迫から、法と警察により保護される権利をもつ。
9、 すべての市民は、まっとうな仕事や雇用を通じて、生活するに足る最低限の収入を得る権利をもつ。
10、 すべての市民は休息する権利をもつ。ゆえに一日8時間を超えて働くことを強いられない。
11、 すべての市民は、医療を択ぶ自由をもつ(ワクチンや種痘を強制するいまの規則は、適切に改められねばならない)。
12、 すべての市民は、成人の選挙権にもとづく投票によって、公的行政に参加する自由をもつ。

1) Nai Talim is a spiritual principle which states that knowledge and work are not separate. Gandhi promoted an educational curriculum with the same name based on this pedagogical principle.
It can be translated with the phrase 'Basic Education for all'. However, the concept has several layers of meaning. It developed out of Gandhi's experience with the English educational system and with colonialism in general. In that system, he saw that Indian children would be alienated and 'career-based thinking' would become dominant. In addition, it embodied a series of negative outcomes: the disgain for manual work, the development of a new elite class, and the increasing problems of industrialization and urbanization.
“ The principal idea is to impart the whole education of the body, mind and soul through the handicraft that is taught to the children. ”
―Mahatma Gandhi

(p.79)
13、 すべての市民は、そのための規則や制限に合致する範囲で、武器を所有し携帯する自由をもつ。

義務
 しかし、これらの権利はすべて、以下の基本的義務を果たすことが条件である:
1、 すべての市民は、とくに国民的緊急事態あるいは外国の侵略に対して、国家に忠誠を尽くすこと。
2、 すべての市民は、現金や現物、労役などのかたちで国庫に貢献することにより、公的福祉を増進すること。
3、 すべての市民は、人の人に対する搾取を避け、防止し、必要ならばそれに抵抗すること。