アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第8章(3)

統治

 州パンチャーヤットは、州の立法部である。とうぜん一院制で、その領域内の全権を治め、前に挙げたような、憲法に定められた州の権能に関係する法律を定める。
 パンチャーヤットは、その州の元首を務める総裁を選任する。
 州パンチャーヤットの業務は、例外なく、その領域ごとの言語によって遂行される。
 完全な権能の分離が、立法部と執行部の間におかれるべきだ。州パンチャーヤットは、各部門を担当する長官あるいは行政官[コミッサール]を任命する。これらの長官はパンチャーヤットに対してすべての責任を負うが、州パンチャーヤットの構成員から選ぶことはできない。
「執行部の長と議会の長とが実質的に同一で、前者がはなはだしく、あるいは過度に高給を食むイギリスのようなところでは、まことの責任は消滅し、策略と陰謀の政党政治が跋扈し、議会は廉潔でありえない。1」 パンチャーヤット構成員の職務は、ことばの真の意味での名誉職でなければならない。
 長官の任期は3年とし、通常、新しいパンチャーヤットによって交代させられることはない。ただし、非効率や収賄を理由とする場合は別である。
 長官は党派の利害や派閥争いによって選ばれてはならず、州のもっとも優れた人材を代表しているべきだ。長官の人数は州の規模によって決まるが、5人を下回り、また9人を超えてはならない。

1 ‘Outline Scheme of Swaraj’, Deshbandhu Das and Dr. Bhagvan Das,. Note to Chapter VI

アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第8章(2)

(p.90)
 将来の憲法における、州の名称はつぎの通り;

    州                      言語
1.アジメール・マーワラ ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
2.アーンドラ      ・・・・・・ テルグ語
3.アッサム       ・・・・・・ アッサム語
4.ビハール       ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
5.ベンガル       ・・・・・・ ベンガル語
6.ボンベイ(市)    ・・・・・・ マラーティー語・グジャラート語
7.デリー        ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
8.グジャラート     ・・・・・・ グジャラート語
9.カルナータカ     ・・・・・・ カンナダ語
10.ケーララ      ・・・・・・ マラヤーラム語
11.マハーコーシャル  ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
12.マハーラーシュートラ・・・・・・ マラーティー語
13.ナーグプル(ベーラルを含む)・・・ マラーティー語 
14.北西辺境州     ・・・・・・ パシュトー語
15.パンジャーブ    ・・・・・・ パンジャーブ
16.シンド       ・・・・・・ シンド語
17.タミル・ナードゥ  ・・・・・・ タミル語
18.連合州       ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
19.ウトカル      ・・・・・・ オリヤー語

 以上の区分は現在の国民会議の州構成に沿っており、ちがいはナーグプルとヴィダールバ(?)を一州にまとめていることだけだが、これにははっきりした理由がある。国民会議構成州の名称もそのまま残しているが、将来の憲法のもとで、州境までいまの国民会議の領域にきっちり対応させる必要はない。

(p.91)
たとえばいくつかの州が、すべてではないにせよ全インド連合に加盟したら、言語境界は各州とよく相談した上で引き直すべきだ。げんざいの連合州も、便利のため分割して東西二州に分けるのがよいだろう。しかしながら、これらの詳細はすべて、インド憲法会議が任命する特別委員会へ信託されねばならない。また必要に応じ、特定地域の人びとの要求を、成人の普通選挙にもとづく住民投票によって認定すべきである。

アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第8章(1)

(p.88)
州政府

 地区パンチャーヤットおよび市政評議会は、おのおのの代表を州パンチャーヤットに派遣する。したがって、その[権能の]強さは、とうぜん州ごとに異なる。小さい州では、地区パンチャーヤットおよび市政評議会の各代表と並んで、ひとりかそれ以上の代表者を州政府へ送ることにしてもよい。
 州パンチャーヤットの任期は3年とし、通常年2回議事を行なう。

機能

 州パンチャーヤットの機能は次の通り;

(a) 地区パンチャーヤットの活動を指導・監督・調整し、会計を監査する。
(b) 非常事態に備え、地区警防団予備隊を運営する。
(c) とくに高等技術教育と研究のため、大学教育を組織・運営する。
(d) 州内に、よく行き届いた交通および通信網を整備する。交通手段は州パンチャーヤットの所有・管理とする。
(e) 適切な灌漑施設を設置する。

(p.89)
(f) 非常時に、飢饉への緊急支援を行なう。
(g) 州立協同組合銀行を運営し、地区パンチャーヤットへ低利融資を供与する。
(h) 州内の天然資源を開発し、必要ならば「枢要」産業を管理する。

州境

 州どうしの境界線は、おもに言語圏にもとづき確定するのがよい。いうまでもないが、現存する州境は歴史的事由によったもので、その背景に科学的配慮はまったくない。多くは、構成に調和と均質さとが欠けているのだ。それゆえ、州の編成は言語にもとづき見直さねばならない。これは絶対に必要である。なぜなら、立法・執行・司法・教育に関するあらゆる業務は州の言語を通じて行なうべきで、二つ以上の言語をかかえる州は、そこで多くの困難を来す。さらに、最高水準にいたる教育指導のなかだちとして、学生たちの母語のほかに適切なものはありえない。二言語あるいは他言語の州で、母語による教育伝達はおよそ実施不可能なのである。この観点からすると、もっとも大幅な再配置が必要なのは、ボンベイ州・マドラス州・中央州であろう。

アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第7章(2)

地区パンチャーヤット

 タルカ・パンチャーヤットの代表者全員が、地区パンチャーヤットを構成する。通常ひとつの地区に、さきに述べたような規模のタルカが1ダースを超えて含まれてはならない。地区パンチャーヤットの任期は3年とする。その機能は;

(a) タルカ・パンチャーヤットの活動を指導・監督・調整し、会計を監査する。
(b) カレッジあるいは初等後の教育を実施する。
(c) 特殊な疾患のため、設備の整った病院を運営する。
(d) 非常事態に備え、地区警防団予備隊を運営する。
(e) 地区協同組合銀行およびマーケティング協会を運営する。
(f) 適切な灌漑施設を整備する。

(p.87)
(g) タルカ間のスポーツ試合や競技会を開催する。

 小さい州のばあい、地区パンチャーヤットは省いてもよいだろう。すなわち、タルカ・パンチャーヤットが州政府と直接結びつくことになる。

市政評議会

 都市では、区パンチャーヤットと市政評議会に幅広い立法および執行権力が与えられる。これら[後者]の機能は、多かれ少なかれ地区パンチャーヤットのそれと同様である。すなわち、区パンチャーヤットの活動を調整することだ。
 市政評議会は、すべての公共交通手段、発電施設および水道網を所有し管理する。

アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第7章(1)

(p.85)
VII
タルカおよび地区パンチャーヤット

 村むらの社会・経済・政治活動を調整するため、タルカ(ターシル)および地区パンチャーヤットを置く。これら上位機関の機能とは、助言であって強制ではない。つまり下位パンチャーヤットを指導し、助言や監督はするが、命令を下すものではない。

タルカ・パンチャーヤット

 一定数の村から正しく選ばれた代表者が、タルカ・パンチャーヤット
を構成する。とうぜん、パンチャーヤット構成員の数は、タルカにまとめられる村の数によって異なる。通常、ひとつのタルカは約20か村からなり、したがってその人口は20,000人前後であろう。いうまでもないが、現行のタルカの規模はかなり縮小し、そこでの行政や立法、司法の業務を、やりやすく効率のよいものにしなければならない。
 タルカ・パンチャーヤットの任期は、むらパンチャーヤットと同じく3年である。
 タルカ・パンチャーヤットの機能はつぎの通り;

(a) 村むらのパンチャーヤットの活動を指導・監督・調整し、会計を監査する。
(b) 中学あるいは高等小学教育を実施する。
(c) 専門的処置のため、より大きい病院・助産院を運営する。
(p.86)

(d) 非常事態に村むらを支えるため、警防団の特別予備隊を運営する。
(e) タルカ協同組合銀行およびマーケティング協会を運営する。
(f) 村むらを結ぶ道路を、良好な状態に維持管理する。
(g) 農作業の効率を増進するため、モデル農場を運営する。
(h) 村どうしのスポーツ試合や競技会を開催する。