アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第9章(1)

(p.93)
IX
中央政府

 各州パンチャーヤットの総裁全員で構成するのが、全インド・パンチャーヤットである。より大きな州のばあい、州パンチャーヤット構成員から、もうひとり代表を州総裁とともに全インド・パンチャーヤットへ派遣してもよい。
 全インド・パンチャーヤットはただ一つの中央立法府である、すなわち一院制を採る。なぜなら二院制は不必要に複雑で、かつ高くつくからだ。円卓会議での演説で、ガンディー翁はこう述べている;

「私は二つ立法府を置くことにはまったく惹かれないし、信用もしていない。人民の立法議会が独走して、あとで必ず後悔するような法律を急いで通してしまうことも、まったく恐れていない。人民の立法議会に汚名を着せたり抹殺したくはない。人民の議会だけでやって行くことはできるし、世界でもっとも貧しい国でやって行く以上、出費は少ない方がより良いのだ。」

 インド各州が全インド連邦に参加するさい、各々はその代表を全インド・パンチャーヤットへ派遣する対等の権利をもつ。これら代表は、州人民会議の総裁が務めるべきで、王たちが選ぶかれらの「操り人形」であってはならない。

日本連邦共和国憲法草案

弘布文

 朕は、主権者である日本国民の名で、国民がその総意にもとづき、日本国憲法第96条に定める国民投票により承認した日本国憲法の改正を、ここに弘布する。

(御名御璽、年月日)

日本連邦共和国憲法::

前文

われら列島の民は、
自らの主権が打立て、
歴史と風土と良俗の上に
自由と平等と友愛が花開き
自治市町村道州が共和する
平和の国のかたちを憲法に定め、
全ての国々や人々の友好に尽くす。


第1章 根本原則

一【主権、共和国の設立、法の支配】
1 共和国の主権は、民びとのものであり、共和国のすべての公権力は、民びとから発する。
2 共和国、および共和国のすべての法は、民びとの約束にもとづく、民びとのための福利である。
3 この憲法は、立法・執行・司法その他すべての公権力、および共和国のすべての民を拘束する。法にしたがわないいっさいの公権力、および憲法に反するいっさいの法律は無効とする。

二【尊厳と権利】
1 あらゆる個人は、それぞれひとつの宇宙であり、おたがいの尊厳をおかしてはならない。
2 共和国と民びとは、すべての個人の尊厳・人格・権利とその発展を、尊重し保証する責任を負う。
3 世界人権宣言、および国連が議決したすべての国際人権条約は、この憲法の前提であり、この憲法を解釈する基準とする。

三【平等】
1 共和国のすべての民びとは、尊厳と権利において平等であり、おたがいを慈しみ公正に遇する責任を負う。
2 共和国と民びとは、人種・信条・性別・身分・門地その他、どんな差別も許さない。ただし、現存する差別を解消するため、期間を特定して法に定める場合のみを例外とする。
3 貴族などの階級制度はみとめない。また特権がともなう恩賞を禁止する。

四【自由】
1 法律および法律の定める手続きにしたがう場合をのぞき、だれも民びとの自由を奪ってはならない。
2 だれも、民びとに恐怖、貧苦、隷属を強制してはならない。また、犯罪に対して処罰以外の苦役を強制してはならない。

五【共和国】
1 日本連邦共和国は、代表制、および国民投票・国民発案については直接制にもとづく、道・州の連邦による民主共和国である。
2 共和国の民主主義は、公開・公平・公然を基調とする民びとの弘論、および民びとの自治にもとづく。
3 共和国の領土は、北海道、本州、四国、九州の4島と琉球弧、およびそれらの法に定める付属諸島にかぎる。
4 共和国は、地方の自立と自治の確立、どうじに、その前提として国土における人口の適正な配分につとめる。
5 国には、自治体間の利害を調整する権限をみとめる。また共和国の法は、自治体の法に優越する。

六【国籍】
1 だれを共和国の国民とするかは、法律に定める。
2 法律に定める例外をのぞき、共和国国民に、出入国、国籍離脱の自由をみとめる。
3 共和国の民びとのうち、かつて大日本帝国の国籍を有したもの、およびその子孫には、法に基準を定め、共和国籍を得る権利をみとめる。

七【外国人】
1 共和国は、国際法および国際条約にしたがい、共和国に住む外国人の権利を保障する。
2 外国人の送還は、条約にしたがう場合にのみ、みとめる。
3 この憲法が保障する自由の行使を、自国においてさまたげられる外国人には、法律にしたがい、共和国に避難する権利をみとめる。

八【国際法
1 共和国の憲法ほかすべての法は、共和国が批准した条約、国際連合が議決した条約およびその決議にしたがう。
2 例外的に、国会が前項に反することを議決するには、国会両院で総議員の3分の2以上の賛成を要する。ただし、秘密条約および国際連合に属さない軍事同盟は、いかなる場合も結んではならない。

九【核からの自由】
1 共和国は、その領域内に核兵器をいっさい置かない。また軍事および核反応からのエネルギーの商業的利用を目的とする、核開発および核施設・装置の設置・製造をみとめない。
2 1項に該当する既存の核兵器・施設・装置は速やかに廃棄し、既存の放射性物質および核廃棄物は、なるべく安全に、危険が消滅するのに十分な期間保管すること。その保管方法に関する詳細は法律に定め、そのさい、作業者および影響のおよぶ民びとの人権とくに健康と安全とを、最大限に尊重すること。

十【自治、市町村】
1 民主主義の根本をなす自治は、それぞれの地域に住む民びとに固有の権利であり、放棄してはならない義務である。
2 市町村の自治体に、その領域内で、法律に定める立法・執行・徴税権をみとめる。

十一【道・州】
1 市町村の集合体として、つぎの道・州を定める:蝦夷アイヌモシリ州、奥州、関八州東海道信越州、北陸道畿内州、中国道、四国道、九州、琉球
2 道・州の自治体に、その領域内で市町村の範囲をこえる、法律に定める立法・執行・徴税権、また市町村間の利害を調整する権限をみとめる。

十二【平和と友好】
1 平和と友好は、幸福な社会の基礎である。共和国と民びとは、国内および世界において、その実現に全力をつくす責任を負う。
2 共和国が、国際紛争の解決を、戦争および武力の行使、あるいは武力による脅しに訴えることは、犯罪とし禁止する。また共和国は、他国のこうした犯罪をみとめず、また支持しない。
3 共和国は、国際紛争国際法の支配にもとづく解決を推進し、この目的のために設立される国際機関の活動を促進し援助する。

<+非武装のばあい:
4 共和国は、警察力にのみ、武器の保持をみとめる。ただしそれは人権をまもるため、あるいは国際法の支配を推進するためにのみ、使用できる。
5 共和国は、可能な資源の地域と国内における自給、国際政治における中立、すべての国々との公開かつ公平な外交、国内および世界における人権擁護・自由・平等・自治と法の支配の推進を、安全保障の基本施策とする。

<+民兵制のばあい:

十三【平和隊】
1 共和国は、憲法が保障する民びとの権利をまもり、安全を保障し、世界における国際法の支配を推進するために、共和国平和隊を置く。
2 平和隊の活動内容は、国内および国際社会における人権擁護、環境や国土の保全、平和維持、社会正義と民主主義の推進、持続可能な開発、および学術文化の振興とする。
3 共和国のすべての成人には、平和隊に参加する権利をみとめ、義務を課す。共和国は、疾病・障害や宗教・信条にもとづいて本人が希望する代替任務を保障し、そのために社会的不利益を受けることは許さない。
4 平和隊の最高指揮権を、首相にみとめる。
5 平和隊および代替任務の組織、運営、訓練や活動は民主的で、憲法の精神にもとづくこと。それ以下、くわしくは法律に定めること。
6 最長5年ごとの国民投票により、平和隊を継続するかどうか決めること。>

<+志願兵制のばあい:

十三【国軍】
1 共和国は、憲法が保障する民びとの権利をまもり、安全を保障し、国際法の支配を推進するために、共和国軍を置く。
2 共和国軍の活動内容は、国内および国際社会における人権擁護、環境や国土の保全、平和維持、社会正義、および民主主義の推進とする。
3 共和国軍の最高指揮権を、首相にみとめる。
4 共和国軍の組織、財政、運営、訓練や活動は民主的で、憲法の精神にもとづき、1項の目的に反しないかぎり公開であること。それ以下、くわしくは法律に定めること。
5 最長5年ごとの国民投票により、共和国軍を継続するかどうか決めること。>


第2章 民びとの権利、自由、および義務

第1条【権利・自由の保持】
1 共和国のすべての民は、憲法が保障する権利と自由とをおたがいに尊重し、また不断の努力によって保持する義務を負う。とくに、国や自治体がそれをおかさないよう監視し、情報を開示させ、説明と責任をもとめ、また、それがもっとも弱い者にも平等に保障されるよう、最大限の関心を払うこと。
2 国や自治体は、この憲法が保障する自由と権利を、社会および法秩序ぜんたいで実現する義務を負う。

第2条【参政権
1 すべての国民に、法律にしたがい、代議員に立候補し、また代議員を選挙する権利を平等にみとめる。
2 法律に定める期間、共和国に滞在しているすべての外国人に、前項の権利をみとめる。ただし、国政選挙に関しては、法律に例外を定めてよい。
3 代議員の選挙はすべて、成人による普通かつ秘密選挙によること。また、だれも選挙人に対し、その選択を理由に、弘的または私的に責任を問い、あるいは社会的不利益を与えてはならない。

第3条【弘務につく権利】
1 すべての国民に、法律にしたがい、弘務につく権利を平等にみとめる。
2 法律に定める期間、共和国に住むすべての外国人には、前項の権利をみとめる。ただし、国政にかかわる弘務については、法律に例外を定めてよい。

第4条【弘務員】

1 すべての国民に、弘務員をえらび、あるいは辞めさせる権利を平等にみとめる。
2 法律に定める期間、共和国に居住するすべての外国人には、前項の権利を平等にみとめる。ただし、国政にかかわる機関については、法律に例外を定めてよい。
3 弘務員は社会全体に奉仕し、主権者である民びとへの責任を果たすこと。弘務員は、職務において憲法および法を忠実にまもり、誠実かつ公平であり、恣意によったり差別待遇を行なってはならない。また法律に例外を定めないかぎり、その職務内容は公開すること。
4 すべての人は、弘務員の違法行為によって受けた損害に対し、法律にしたがい、賠償を受ける権利をもつ。
5 弘務員には、その違法行為に関し、団体のみならず個人としての責任も、免除しない。

第5条【請願権】
1 すべての人は、国および自治体の権限をもつ部門へ、文書その他の平穏な手段により、請願し、あるいは異議や苦情を申し立てる権利をもつ。担当部門には、それを審査し、適切に対応し、文書により回答する義務を課す。また、これに対する違反および不作為は違法とする。
2 だれも、前項の請願や申し立てを行なった人に、それを理由に、差別待遇や社会的不利益を与えてはならない。

第6条【精神の自由】
1 共和国のすべての民は、個人・団体を問わず、思想、良心および宗教の自由と、それらを自由に表明する権利をもつ。この権利は、公開のものに関してのみ、かつ環境または心身の健康を保護する、あるいは交通を円滑に保つためにだけ、法律により制限してよい。
2 だれも、特定の思想、宗教、またそれらの活動への参加を強制してはならない。
3 共和国は、いかなる宗教団体にも特権を与えない。また、布教や信仰の強制とみなされる行為や教育、および特定の宗教を対象とする、国費による援助は行なわない。

第7条【学問・芸術の自由、著作権文化財
1 すべての人は、学問・芸術・科学技術研究の自由をもつ。共和国はそれを保証・促進し、そこから得られる福利を民びとに還元する。
2 共和国は、学術的著作や芸術作品に対する、作者固有の権利を保障する。
3 共和国は、景観の美、および歴史・学問・芸術などの文化財を保護する。

第8条【表現・情報への自由、アクセス権】
1 共和国のすべての民は、意見、思想や情報をさがし、取得し、表現する自由をもつ。だれも、それを検閲したり、事前の届け出や許可を強いてはならない。
2 マスメディアは、公正かつ多様な意見を交流させる使命のためにのみ、法律で規制してよい。ただし、内容の検閲や編集への干渉は禁止する。
3 18歳未満の子どもによる、または子どもを対象とする表現や情報は、その権利または健全な成長を保障するためにのみ、法律で規制してよい。
4 憲法が保障する表現の自由は、商業広告を対象としない。
5 弘文書その他、国や自治体の情報に関し、担当する機関は必ず、それを自由かつ容易に検索・閲覧できる状態で保管し、かつ一般に公開すること。

第9条【通信の自由】
 だれも、通信の秘密をおかしてはならない。その例外は、法律に定める場合に関して、裁判所が、実行する者と対象を特定し、またその者が、法律に定める手続きにしたがう場合のみとする。

第10条【プライバシー・個人情報】
1 共和国のすべての民は、私生活や家族生活の秘密を、尊重される権利をもつ。
2 共和国のすべての民は、個人情報の濫用から保護される権利をもつ。個人情報を記録し公開するための規則、および記録の事実を記録された人に知らせ、また訂正を受ける義務に関する規則は、法律に定めること。
3 前2項の権利と、第8条に定める表現・情報への自由との、相互に対する限界は、法律に定めること。

第11条【結社の自由】
 共和国のすべての民は、団体をつくり活動する自由をもつ。ただし、暴力行為をはじめ、憲法に定める民びとの権利や自由の侵害、あるいは民主主義の破壊を活動の目的ないし内容とする団体についてのみ、法律により制限してよい。

第12条【政党結成の自由】
1 共和国のすべての民は、政党を結成する自由をもつ。政党には、民びとが政治的な意志を表現・形成することに協力し、民びとの政治参加を実現し促進する責任を課す。
2 共和国は、民びとの多様な意志を反映するため、複数政党制を保障する。
3 政党の結成・組織・活動は、法律にしたがい、かつ民主的であり、とくに言論の自由を政党の内外において保障すること。
4 政党の財政は、公開すること。

第13条【社会生活権】
1 共和国のすべての民は、憲法に定める権利を実現し、自由と品位と尊厳をもって生活し、社会にその一員として参加し活動する権利をもつ。
2 国や自治体は、前項の権利を保障するため、富や資源が適正に配分されるようつとめること。
3 1項の権利を、自分だけでは実現できない民びとには、社会保障を受ける権利をみとめる。その条件は、法律に定めること。

第14条【男女平等】
1 共和国のすべての男女は、労働、収入、教育、婚姻、家族生活、財産、相続、その他社会のすべての局面において、完全に平等な権利をもつ。また、おたがいの権利を尊重し擁護する責任を負う。
2 国や自治体は、すべての男女を法の下で平等に取りあつかうこと。ただし、現実に起きている性差別を取り除くまでの間、法律に定める措置をのぞく。

第15条【子どもの権利】
1 子どもは、共和国そして世界の、未来そのものである。
2 共和国は、すべての子どもに、その人格を保護され、また自由な発展を支援される権利を保障する。
3 共和国は、すべての子どもに、憲法が保障する権利および自由を、その判断能力に応じて学び、行使する権利を保障する。
4 共和国は、すべての子どもに、必要ならば適切な協力者を通して、その意見を表明し、理解され、考慮される権利を保障する。国や自治体で専門的にその業務に当たる、子どもの権利弁務官等の規定は、法律に定めること。

第16条【お年寄りの権利】
1 お年寄りは、共和国そして世界の、歴史そのものであり、民びとに共通の未来である。
2 役所は、すべてのお年寄りに、適切にかつ定期的に更新される年金により、憲法が保障する権利を享受するのにじゅうぶんな生計を保障すること。また、その状況やニーズに配慮し、社会事業などの施策を通じて、その生活の質の向上につとめること。

第17条【障害者の権利】
1 共和国は、障害者、すなわち機能障害と外的障壁との相乗により、社会への参加および活動を妨げられるすべての民びとに、憲法に定める権利を平等に保障し、その享受に必要な援助を受ける権利をみとめる。援助を受けるための基準は法律に定めること。
2 国や自治体は、障害者に対し、前項の権利を保障するための条件および環境を整備すること。

第18条【少数者の権利】
1 共和国の民族・言語・文化的少数者に、少数であることを理由に差別したり、社会的な不利益を与えてはならない。
2 共和国は、前項の少数者に、固有の言語・文化・社会生活の様式を受け継ぎ発展させる権利を保障する。そこには教育や普及・振興活動への権利を含める。

第19条【家族・婚姻への権利】
1 共和国のすべての民は、婚姻を結び、あるいは家族を構成し生活する権利をもつ。
2 共和国は、婚姻において、両者に平等な法的権利を保障する。また婚姻の最低年齢は、法律に定めること。
3 家族における法的権利は、おたがいの尊厳と人格の尊重、および平等の原則にもとづくこと。どうじに家族内の弱者に対し、役所は、状況に応じた適切な援助を講じること。

第20条【環境権】
1 共和国のすべての民は、人格の涵養にふさわしい環境のもとで生活する権利、およびそれを保護し次世代に手渡す、共同の責任を負う。
2 すべての住民は、美しく快適なむら・まちに生活する、またそれを創造し維持する、固有の権利をもつ。
3 役所および事業者は、環境を保全し向上させる義務を果たすこと。この義務は、違反者への罰則を伴う法律に定めること。
4 国は、天然資源の合理的かつ計画的な利用、および地球環境保全のための国際機関の活動を促進し、またそれらの情報を民びとに公開し普及させること。
5 国および自治体は、動植物の保護、取り扱い、利用、輸出入、運搬などに関して、その基準を法律および条例に定めること。

第21条【居住する権利、移動の自由、住居】
1 共和国のすべての民は、居住する権利、および移転の自由をもつ。
2 役所には、民びとにじゅうぶんな量と質の住まいを確保する義務を課す。

第22条【健康・余暇】
1 共和国のすべての民は、健康な生活への権利をもつ。
2 役所は、民びとの健康増進をはかり、公衆衛生を向上させ、利用しやすさと質において、平等かつじゅうぶんな保健医療サービスを整備すること。
3 役所は、余暇活動がさかんになる条件を整備し、社会と文化の発展をはかること。

第23条【教育】
1 教育は、共和国の永遠の課題であり、未来への最大の遺産である。
2 共和国は、教育への権利および教育の自由を保障する。教育の目的は、国連人権宣言、国際人権規約子どもの権利条約その他の国際人権法にしたがい、さらにくわしい内容は教育憲章に定める。
3 共和国のすべての民は、弘立学校で最低9年間の初等教育を、無償で受ける権利をもつ。また役所は、だれもが通学できる範囲に学校をおき、じゅうぶんな数と質の教師をもって、この権利を平等に保障すること。
4 初等教育は、生徒およびその保護者、教師、学校および市町村の、自治により運営すること。各市町村は、それらを調整し、必要な調査、研究、提言を行なう機関として、住民が選挙した委員からなる、教育委員会を設けること。
5 3項の権利が満たされている民びとは、私立学校や家庭で初等教育を受けてもよい。ただし、それらの教育は、法律にしたがい、また各市町村の教育委員会が定める基準を満たしていること。
6  初等教育以外の教育について、国や自治体は教育を受ける民びとそれぞれの志向にしたがい、最大限の支援と機会を平等に保障すること。
7 教育、学習、および学校におけるすべての活動は、隷属や苦役、また人格や尊厳を傷つけるものであってはならない。

第24条【職業をえらぶ自由】
1 共和国のすべての民は、職業をえらぶ自由をもつ。その例外は法律に定めること。
2 役所は、じゅうぶんな種類と量の雇用が確保されるようつとめ、それを民びとに公平に配分すること。

第25条【労働権・休息権】
1 共和国のすべての民は、能力と選択に応じて働き、必要に応じて休息する権利をもつ。またこれらは、放棄してはならない義務である。
2 奴隷的酷使をともない、あるいは健康や尊厳を傷つけるような労働は禁止する。
3 すべての労働者は、労働の量と質に見合い、自己と家族の生存を支えるのにじゅうぶんな報酬を受ける権利をもつ。その基準は法律に定めること。
4 労働日および労働時間の最高限度、休息時間および年次有給休暇の最低限度は、違反する事業者および労働者に対する罰則をともなう法律に定めること。
5 役所は、労働時間と休息時間とが、民びとに、適正かつじゅうぶんに配分されるよう政策をたてること。

第26条【女子労働、子どもの労働】
1 共和国は、すべての女子労働者に、その採用・労働条件・報酬その他について、男子労働者と同等の権利を保障する。
2 法律に定める労働条件は、とくに労働者とその乳幼児に対して、育児手当、有給の育児休暇、保育サービス、その他、幸福な家庭生活を送るためにじゅうぶんな保護を保障すること。
3 子どもが働いてよい最低年齢、およびその例外規定を、法律に定めること。ただし、子どもを隷属させ酷使したり、同等の労働において成人労働者よりも不利な条件に置くことがあってはならない。

第27条【無業者・失業者】
 役所は、働く意志があるにもかかわらず失業し、あるいは仕事がなく、あるいはその技能がない民びとに、その生活、および弘的機関による教育と職業訓練の機会を保障すること。

第28条【労働者の権利】
1 共和国は、労働者の団結する権利、および団体交渉その他の団体行動への権利を保障する。
2 共和国は、労働者によるストライキ、および事業者によるロックアウトの権利を保障する。それらが許されない人や職業は、法律に定めること。
3 共和国は、労働者と事業者の共同決定への権利を保障する。その範囲や方法は、法律に定めること。

第29条【財産権
1 すべての民びとは、私有財産への権利をもつ。法人の財産権は、その社会や民びとの権利・自由に対する影響の大きさを考慮しながら、法律に定めること。
2 財産権の行使には責任がともない、その影響がおよぶ社会ぜんたいの福利に反してはならない。そうした責任や制限の内容は、法律に定めること。
3 弘権力が私有財産を収用し、あるいは財産権を制限してよいのは、法律にしたがい、民びとと社会ぜんたいの福利に役立つことが明らかで、また社会と当事者の利益に照らして正当な補償が確証できる場合にかぎる。ただし、災害など緊急時については、補償が部分的に確証できる場合でもよい。

第30条【納税の義務
1 共和国のすべての民は、国や自治体の正当な活動の財源、および民びとへの適正なサービスへの対価であり、公平かつ累進の原則にもとづく租税に関して、法律にしたがい、納める義務を負う。
2 役所は、税収を効率よく運用し、法律に例外を定めないかぎり、その使途内容を明示すること。

第31条【身体への権利】
1 法律および法律に定める手続きにしたがう場合を除き、だれの身体およびその自由もおかしてはならない。また法律に、身体の尊厳をおかす内容を定めてはならない。
2 明確かつじゅうぶんな説明に対して任意に表明された同意なしに、だれも医学的処置、および医学はじめ科学的実験の対象としてはならない。緊急時の例外については、法律に定める。
3 法律および法律に定める手続きにしたがう場合をのぞき、だれも特定の医学的あるいは保健的処置を強制してはならない。

32条【奴隷的拘束・苦役の禁止】
 だれも、奴隷的拘束を行なってはならない。また、犯罪による処罰の場合をのぞき、意に反する苦役を強制してはならない。

第33条【裁判を受ける権利】
1 裁判所において裁判を受ける権利を、だれからも奪ってはならない。
2 国や自治体は、すべての人に、訴訟や請求、請願、異議や苦情の申し立て、裁判に関して、弁護、通訳その他の必要な援助を受ける権利を保障すること。
3 経済的な理由で前項の援助を受けられない人に、法律にしたがい、役所から必要な援助を受ける権利をみとめる。

第34条【逮捕の要件】
 現行犯として逮捕する場合をのぞき、権限をもつ裁判官が発行し、かつ逮捕理由となる犯罪を明示する令状によらなければ、だれも逮捕してはならない。

第35条【住居の不可侵】
1 だれも、第34条の場合をのぞき、正当な理由にもとづいて発行され、かつ捜索する場所および押収する物を明示する令状なしに、その住居、書類および所持品について、侵入、捜索および押収を行なってはならない。
2 前項の令状は、権限をもつ裁判官が、個別に発行すること。

第36条【抑留・拘禁の要件、外部通行権、無罪推定】
1 だれも、事前にその理由を理解可能な方法で告げ、かつ、弁護人を依頼する権利および機会を与えないで、抑留または拘禁してはならない。
2 だれも、外部との連絡がいっさい取れない状態で、抑留または拘禁を続けてはならない。
3 だれも、裁判で有罪とされるまでは無罪とみなすこと。ゆえに、その抑留または拘禁じたいが意味を失わないかぎり、どんな自由も 奪ってはならない。

第37条【不法拘禁に対する保障】
1 だれも、正当な理由なしに拘禁してはならない。
2 拘禁を行なってよいのは、司法機関の施設にかぎる。
3 要求があれば、拘禁の理由を、ただちに本人およびその弁護人の出席する公開の法廷で示さなければならない。また、裁判官がその拘禁を不当であると判断した場合は、ただちに釈放しなければならない。

第38条【罪刑法定主義、残虐刑・拷問の禁止】
1 法律および法律の定める手続きに従わない刑罰は禁止する。
2 非人道的あるいは残虐で、個人の尊厳をそこなう刑罰を、法律に定めてはならない。
3 役人による拷問は、絶対にこれを禁ずる。

第39条【生命への権利、死刑禁止】
1 すべての人は、生命への不滅の権利をもつ。
2 死刑は禁止する。

第40条【刑事被告人の権利】
1 すべての刑事事件において、被告人には、裁判所の公平かつ迅速な公開裁判を受ける権利を保障すること。
2 刑事被告人には、すべての証人に対して審問する機会を充分に与え、また、公費で自己のために強制的手続により、証人を求める権利を保障すること。
3 刑事被告人は、いかなる場合でも、資格を有する弁護人を依頼してよい。被告人が自弁で弁護人を依頼できないときは、国から援助を受ける権利を保障すること。

第41条【自己に不利益な供述、自白の証拠能力】
1 だれも、自己に不利益な供述を強要してはならない。
2 だれも、強制、拷問もしくは脅迫による自白、または不当に長く抑留または拘禁された人の自白を、証拠としてはならない。
3 だれも、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である人に、有罪を宣告し、または刑罰を科してはならない。

第42条【遡及処罰の禁止、一事不再理、例外規定】
1 だれも、実行の時点では適法であったか、無罪とされる行為について、刑事上の責任を問うてはならない。
2 だれも、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問うてはならない。
3 1項は、国際条約の定める人道に対する犯罪、平和に対する犯罪、社会や経済に重大な混乱をおよぼす犯罪、および弘務員やその組織による犯罪を対象としない。また、これらの犯罪には時効をみとめない。

第43条【刑事補償】

 共和国は、抑留または拘禁されたのち、裁判で無罪となった人に、法律にしたがい、国から補償を受ける権利を保障する。


第3章 国会

第44条【国会の地位】
 主権者である共和国のすべての民は、国会を、そのもっとも重要な代表者と定める。

第45条【国会の権力および義務】
1 国会は、法律・租税・予算を議決する、国の唯一の立法機関とする。またその他、法律に定める権力を与える。
2 国会には、憲法の規定を実施するために必要かつ適切な、いっさいの法律を定める義務、および役所を監視する義務を課す。

第46条【立法権の留保】
 憲法に定める場合について、国民投票による立法権を、共和国民に留保する。

第47条【二院制
1 国会は、民議院および連邦院の両議院で構成する。
2 両議院の議員の定数は、法律に定めること。

第48条【議員および選挙人の資格】
 両議院の議員およびその選挙人の資格は、法律に定めること。ただし、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産または収入による差別を禁じる。

第49条【民議院議員の選挙および任期】
1 民議院は、国民を代表する、選挙された議員で組織する。
2 民議院議員の選挙は比例代表制により、議席は各政党にその得票数に比例して配分する。各政党は候補者をあらかじめ公開し、どうじに投票者には、投票する政党の特定の候補者に対する選択を表明する選択肢を与えること。各政党は、より多く選択された順に当選者を確定すること。
3 選挙に参加し、かつ第12条の規定にしたがう有権者の団体は、すべて政党とみなすこと。
4 民議院の議席は、各選挙区にその人口に比例して配分すること。ただし、ひとつの選挙区が道・州の境界をこえてはならない。
5 民議院議員の任期は4年とする。ただし民議院が解散した場合は、任期満了前に終了すること。

第50条【連邦院議員の選挙および任期】
1 連邦院は、各道・州を代表する、選挙された議員で組織する。
2 連邦院議員は各道・州から住民の直接選挙により選出し、議席はすべての道・州に同数ずつ配分すること。
3 連邦院議員の任期は6年とし、3年ごとにその半数を改選すること。

第51条【選挙に関する事項】
 選挙区、投票の方法その他、両議院議員の選挙に関するくわしい規定は、法律に定めること。

第52条【国会総会】
1 国会総会は、憲法に定める場合、あるいは国会各議院の決議にもとづいて招集する、両議院の議員全員からなる合同会議である。
2 国会総会を開いている期間、両院は一体とみなす。
3 国会総会の議長には、民議院議長を任命すること。

第53条【国会議員の兼職禁止】
1 だれも、同時に両議院の議員であってはならない。
2 国会議員はその任期中、国務相をのぞく監査委員、裁判官、オンブズマンその他の国および自治体の弘務員、あるいは弁護士を兼職してはならない。

第54条【議員の報酬】
 両議院の議員には、法律にしたがい、税収から、その活動および生活に適当な額の報酬を与える。そのくわしい基準は法律に定める。

第55条【議員の不逮捕特権
 両議院の議員を、法律に定める場合を除き、国会の会議中、または会議への移動中に逮捕してはならない。またそれ以前に逮捕された議員は、所属する議院の要求があれば、会議中は釈放しなければならない。

第56条【議員の独立・発言の無責任】
1 両議院の議員は国民を代表して討論および表決を行なうこと。また、そのさい自己の良心にのみしたがい、選挙人の指示や委任に拘束されないこと。
2 両議院の議員に、議院で行なった演説、討論または表決について、院外で責任を問うことを禁ずる。ただし、個人を誹謗し中傷することのみを目的とした場合は例外とする。

第57条【議員の宣誓義務】
 すべての国会議員は、就任のさい、所属する議院の公開の会議で、法律に定める基準にしたがい、主権者に対して、身の潔白を証し、憲法への忠誠と、職務の誠実な遂行を宣誓すること。

第58条【常会】
 国会の常会は最低、毎年1回の召集を定めること。

第59条【臨時会】
1 内閣は、国会の臨時会の召集を決定してよい。いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定すること。
2 国民発案があれば、その議決のため、提出日から30日以内に臨時会を招集すること。

第60条【民議院の解散、特別会、連邦院の緊急集会】
1 民議院が解散されたときは、解散の日から30日以内に、民議院議員の総選挙を行ない、その選挙の日から30日以内に、国会を召集すること。
2 民議院が解散されたときは、連邦院は、どうじに閉会すること。ただし、内閣は、共和国の緊急の必要をみとめるときは、連邦院の緊急集会を求めてよい。
3 前項の緊急集会がとる措置は、臨時のものであり、つぎの国会開会ののち10日以内に、民議院の同意を得ないかぎり、効力をうしなう。

第61条【議員の資格争訟】
 両議院に、それぞれの議員の資格を審査し、またそれに関する争訟を裁判する権限をみとめる。ただし、議員の資格を奪うには、出席議員の3分の2以上の多数により議決すること。

第62条【定足数・多数決】
1 両議院および国会総会はそれぞれ、その総議員の3分の1以上の出席がないかぎり、議事を開き議決してはならない。
2 両議院および国会総会の議事は、この憲法に定める場合をのぞき出席議員の過半数で議決し、賛成・反対同数のときは、議長が決定すること。

第63条【会議の公開、秘密会】
1 両議院および国会総会の会議は、公開すること。ただし、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会としてよい。
2 両議院および国会総会は、それぞれの会議の記録を自由かつ容易に検索・閲覧できる状態で保管し、かつ一般に公開すること。
3 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、会議録に記載すること。

第64条【役員の選任、議院規則、懲罰】
1 両議院および国会総会はそれぞれ、議長その他の役員を選任すること。
2 両議院および国会総会はそれぞれ、会議その他の手続および内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序をみだした議員を懲罰してよい。ただし、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数により議決すること。

第65条【議案提出権・国民発案】
1 国会議員に、単独または複数で、法律案を国会に提出する権利をみとめる。
2 首相に、内閣を代表して議案を国会に提出する権利をみとめる。
3 50万人以上の有権者に、共同で議案を国会に提出する権利をみとめる。

第66条【法律案の議決、民議院の優越】
1 法律案は、この憲法に定める場合をのぞき、両議院で可決して法律とすること。
2 民議院で可決し、連邦院でこれと異なる議決をした法律案は、民議院で出席議員の3分の2以上の多数でふたたび可決したとき、法律とすること。
3 2項の場合、民議院は二回目の評決を行なう前に、国会総会を召集し協議すること。
4 連邦院が、民議院の可決した法律案を受け取った後、60日以内に議決しないときは、民議院は、連邦院がその法律案を否決したものとみなすこと。

第67条【連邦院の予算先議】
1 内閣は、予算を、さきに連邦院へ提出すること。
2 予算について、民議院が連邦院と異なる議決をした場合は、国会総会を開いて協議し、その議決を国会の議決とすること。
3 民議院が、連邦院の可決した予算を受け取った後、30日以内に議決しないときは、連邦院の議決を国会の議決とすること。

第68条【条約の国会承認と民議院の優越】
 条約の締結に必要な国会の承認については、第66条の規定を準用すること。

第69条【首相の指名、省庁の設立・改廃】
1 首相は、民議院議員の中から、民議院の議決により指名すること。この指名は、大統領の指名をのぞく、他のすべての案件に先だって行なうこと。
2 国会総会は、国の各省庁の設立、および改廃を議決してよい。

第70条【議員への情報公開】
1 単独、または複数の国会議員が要求するあらゆる情報を、該当する国務相、または国や自治体の機関の長は、口頭または文書で提供すること。ただし、それが共和国の利益をいちじるしくそこなうことを確証できる情報をのぞく。また、この義務に対する違反および不作為は、違法とする。
2 前項の規定によって提供しなかった情報は、その時点で期日を定め、のちにかならず公開すること。その期日は、提供を求められた日から20年を超えてはならない。

第71条【議員の国政調査権
 議員に、単独、または複数で国政に関する調査を行ない、これに関して、証人の出頭および証言ならびに記録の提出を要求する権利をみとめる。これに応じないこと、またこれを妨害することは違法である。

第72条【国務相の議院出席】
1 首相その他の国務相に、議案について発言するため、議院に出席する権利をみとめる。また、答弁または説明のために出席を求められたときは、かならず出席し、その説明責任を全うすること。
2 前項の場合、国務相は、各1名の補佐者とともに出席してよい。


第4章 大統領

第73条【大統領の地位】
 主権者である共和国のすべての民は、大統領を、共和国の統合の象徴および国際法上の代表者とみとめる。

第74条【大統領の選挙および任期】
1 大統領は、連邦院議員の中から国会総会が選挙すること。その場合、総議員の過半数の票を得るか、該当するものがいなければ2回目の選挙で絶対多数を得ること。
2 大統領の任期は5年とし再選は禁止する。また現職および前任の大統領と同じ道・州の議員は、つぎの大統領選挙に立候補できない。
3 大統領の任期が終了する場合はその30日前に、大統領が辞職・死亡・罷免などの理由で欠けた場合はそれから15日以内に、国会総会は新しい大統領を選挙すること。ただし民議院が解散されている場合は、新しい国会が召集されたら他のすべての案件に先立って、これを行なうこと。

第75条【大統領代行】
 大統領が欠けているあいだは、連邦院議長がその職務を代行する。

第76条【大統領の兼職禁止】
 大統領にはその任期中、いっさいの兼職を禁じる。

第77条【大統領の報酬】
 大統領には、法律にしたがい、税収から、職務に求められる高い弘共性と聖徳とを保証するのに適当な額の報酬を与える。そのくわしい基準は法律に定める。

第78条【大統領の宣誓義務】
 大統領は就任のさい、公開の国会総会で、法律に定める基準にしたがい、主権者に対して、憲法へ忠誠を尽くし、共和国の福利のために私心にとらわれず職務を誠実に遂行する旨を宣誓すること。

第79条【副署】
1 大統領の弘的な行為には担当する国務相の提案または同意を必要とし、大統領が発行する弘的文書は、担当する国務相の副署がなければ、法的効力をもたない。ただし例外として、首相の任命および民議院の解散には、副署を必要としない。
2 法律および立法的な効力をもつ文書や命令、その他法律に定める文書の公布には、担当する国務相とともに首相の副署を必要とする。

第80条【大統領の無答責・訴追・罷免】
1 大統領の職務における責任は、担当する、あるいは副署を行なった国務相が負い、大統領は法的に訴追されない。
2 大統領の職務への違反、および違法行為は、国会総会が決議して憲法裁判所へ弾劾することができる。憲法裁判所は、それを審判するあいだ大統領の職務を停止してよい。
3 憲法裁判所は、前項の審判のけっか、有責とされた大統領を罷免してよい。

第81条【大統領の職務】
 大統領は、以下の職務を行なうこと。

一 憲法改正、法律、政令を公布する。
二 国会を召集し、また民議院を解散する。 ただし、任期のさいごの3か月間は、解散してはならない。
三 国会議員の選挙、および国民投票を告示する。
四 国務相および最高裁判所長を任免し、全権委任状、大使、公使の信任状を認証する。
五 減刑刑の執行の免除および復権を認証する。
六 栄典を与える。
七 条約を批准し、法律に定める外交文書を認証する。
八 外国の大使および公使を信任し接受する。


第5章 内閣

第82条【内閣の地位、執行権】
 主権者である共和国のすべての民は、内閣に、国会の信任にもとづき、憲法および法律を忠実にまもり、民びとに奉仕する限りにおいて、法の執行権をみとめる。

第83条【内閣の組織】
1 内閣は、法律にしたがい、首相および国務相で構成する。
2 首相を、内閣の首長と定める。
3 首相および国務相は文民であること。また、私的にも公的にも国会議員以外の兼職を禁ずる。
4 内閣に、執行権の行使について、国会に対する連帯責任を課す。
5 内閣に、政府各省に対する人事権をみとめる。

第84条【国務相の任免、国務相の辞職勧告】
1 首相は、国会の助言のもとに、国務相を任命すること。
2 首相に、国務相を罷免する権限をみとめる。
3 国務相は、首相に辞職を勧告してよい。

第85条【閣僚の宣誓義務】
 首相および国務相は、就任のさい、国会両院の公開の会議で、法律に定める基準にしたがい、身の潔白を証し、憲法への忠誠と、職務の誠実な遂行を宣誓すること。

第86条【内閣の信任】
1 首相は、内閣成立後10日以内に、国会両議院へ内閣信任の決議案を提出すること。
2 内閣信任の決議案を両議院で可決しない場合、首相はその時点から20日以内に新たな内閣を組閣し、成立後10日以内に、国会両議院へ信任の決議案を再提出すること。
3 前項の場合でも内閣信任の決議案が可決されない場合、あるいは国会が内閣不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決した場合、首相は内閣を総辞職させるか、大統領に民議院の解散を提案すること。ただし国会が新たな首相を指名した後で、解散を提案することはできない。

第87条【内閣の総辞職】
 首相が欠けたとき、または民議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は総辞職すること。

第88条【総辞職後の内閣の職務】
 前2条の場合、内閣は、新しい内閣が信任されるまで、引き続きその職務を行なうこと。

第89条【首相の職務】
 首相に、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務および外交関係について国会に報告し、ならびに国の機関を指揮監督する権限をみとめる。

第90条【内閣の事務】
 内閣は、ほかの一般行政事務のほかに、以下の事務を行なう。

一 憲法にしたがって法律を誠実に執行し、共和国を統治する。
二 外交関係を処理する。
三 条約を締結する。ただし事前に、つごうによっては事後に、国会の承認を経ること。ただし、締結にともない、法律の改廃または制定が予定される、あるいは国会の議決すべき案件をともなう条約は、事前に国会の承認を経なければ無効とする。
四 法律の定める基準にしたがい、役所に関する事務を監督する。
五 予算を作成して国会に提出する。
六 法律に定めて内閣に委任している規定を実施するため、政令を制定する。ただし、政令には、とくにその法律に委任を定めている場合をのぞき、罰則を設けてはならない。また、各政令には5年以下の時効をもうけること。
七 減刑刑の執行の免除および復権を決定する。ただし、事前に国会の承認を経ること。

第91条【法律・政令の署名・連署
 法律および政令は、主任の国務相が署名し、首相が連署したものを有効とみなす。

第92条【国務相の起訴】
 国務相を、その在任中、首相の同意なしに、起訴してはならない。ただし、このために起訴する権利が消滅することはない。


第6章 司法

第93条【裁判所の地位、裁判官の独立】
1 共和国は、民びとの権利を守るために、司法権は裁判所にのみ、みとめる。
2 裁判は、共和国の名において行なうこと。
3 裁判官は、独立して職務に当たり、この憲法および法律にのみしたがうこと。
4 裁判官の兼職は禁止する。

第94条【司法権の独立】
1 共和国は、司法権の独立を保障する。司法に関する法律は、とくに行政権からの独立に留意して、制定すること。
2 特別裁判所の設置は禁止する。

第95条【最高裁判所の構成、最高裁判所裁判官の任命】
1 最高裁判所は、法律に定める員数の裁判官により構成する。
2 最高裁判所裁判官は、国会総会が票決し、得票数の順に指名した候補者の中から、内閣が選任すること。ただし、候補者の数が定員の2分の3を超えてはならない。
3 最高裁判所長は、前項の裁判官の中から、首相の指名にもとづき、大統領が任命すること。

第96条【最高裁判所裁判官の国民審査】
1 最高裁判所裁判官は任命後、初めて行なわれる民議院議員総選挙のさい、国民投票による審査に付し、その後10年を経過したのち初めて行なわれる民議院議員総選挙のさい、さらに審査に付し、その後も同様とすること。
2 50万人以上の有権者が共同で発案した場合は、ただちに国民投票による審査を行なうこと。
3 前2項の場合において、投票者の過半数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官を罷免すること。
4 審査に関するその他の事項は、法律に定めること。

第97条【最高裁判所裁判官の報酬・定年】
1 最高裁判所裁判官には、すべて定期に相当額の報酬を与える。この報酬は、在任中、減額してはならない。
2 最高裁判所裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官すること。

第98条【裁判所の規則制定権、検察官の地位】
1 最高裁判所に、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律および司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限をみとめる。
2 最高裁判所は、下級裁判所に、その規則を定める権限を委任してよい。
3 検察官は裁判所に所属し、裁判所の定める規則にしたがうこと。

第99条【下級裁判所の裁判官】
1 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所が任命すること。
2 下級裁判所の裁判官は、任期を10年とし、連任してよい。ただし、法律の定める年齢に達した時には退官すること。
3 下級裁判所の裁判官には、すべて定期に相当額の給与を与える。この報酬は、在任中、減額してはならない。

第100条【裁判官の身分保障
 裁判官を、最高裁判所が心身の故障のために職務を行なえないと決定した場合、あるいは憲法に定める弾劾によった場合以外、罷免してはならない。役所には、裁判官の懲戒処分を行なう権限をみとめない。

第101条【裁判および裁判記録の公開】
1 裁判の対審および判決は、公開法廷で行なうこと。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公序良俗あるいは当事者の人権を著しく害するおそれがあると判断した場合は、対審は、公開しないでよい。ただし、政治犯罪、公務員の職務に関する犯罪、出版および表現に関する犯罪の対審は、かならず公開すること。
3 法律に定める場合を除き、裁判記録は公開し、そこでは判決の根拠を明示すること。

第102条【憲法裁判所の地位】
 共和国は、憲法裁判所を、以下の審判に関する終審裁判所と定める。

一 あらゆる条約、法律、条例、命令、規則または処分が、憲法に適合するかしないかを審判すること
二 法律あるいは条例が、批准された条約に適合するかしないかを審判すること
三 弘的機関の間の、権限に関する争訟を審判すること
四 弾劾を審判すること
五 弾劾を受けた大統領の職務を停止し、あるいは罷免すること
六 国民発案および国民投票の適法性を審査し、その結果を認証し公表すること
七 国会議員選挙の、実施における争訟を審判すること
八 憲法が保障する権利、自由および義務に関する、法律に定める訴願を審判すること

第103条【憲法裁判所裁判官】
1 憲法裁判所は、首相の指名にもとづき大統領が任命する、15人の裁判官で構成する。
2 前項の裁判官のうち、5人は国会総会が票決により、候補者から得票数の順に選出した者で、他の5人は最高裁判所が選任した者であること。
3 憲法裁判所長は、1項の裁判官の中から、国会総会の議決にもとづき、大統領が任命すること。
4 憲法裁判所裁判官の任期は、終身とする。
5 憲法裁判所裁判官には、職務の高い独立性と中立性を要求し、政党あるいは労働組合に加入し、または政治や政治性の高い活動に関与することを禁じる。

第104条【憲法裁判所の規則制定権】
 憲法裁判所に、審判に関する手続き、内部規律および司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限をみとめる。


第7章 財政、監査院および護民官

第105条【財政処理の権限】
 共和国の財政、税収や国費の支出、あるいは国による債務の負担は、すべて国会の議決にもとづくこと。

第106条【課税の要件】
 国や自治体は、法律に定めていない税を課してはならない。また、国会の議決を経たのち、税の目的や内容の変更は禁止する。

第107条【予算の作成と議決】
1 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出すること。予算は、国会の審議と議決をへて、確定とみなす。
2 内閣は、会計年度ごとに予算案を編成し、会計年度が始まる90日前までに国会に提出すること。国会は、会計年度が始まる30日前までに、予算案を議決すること
3 新しい会計年度が開始するまでに予算案が議決されないときは、内閣は、前年度予算に準じる暫定予算を、国会に提出し、議決を経ること。
4 予算ないし暫定予算が議決されるまで、税を課してはならない。

第108条【補正予算
 政府は、予算に変更を加える必要が生じたときは、補正予算案を編成して国会に提出し、議決による承認を受けること。

第109条【継続費・予備費
1 一会計年度を超えて引き続き支出が必要なばあいは、内閣は、その年限を定め、継続費として国会の議決を経ること。
2 予備費は、はじめに総額で、国会の議決を経ること。その上で、予備費の支出は、次期国会の承認を受けること。予備費の内容および上限は、法律に定めること。

第110条【弘共財産の支出利用の制限】
 税収その他の弘共の財産を、支出され、あるいは利用する事業および団体に対し、管轄する役所は、民びとへの説明責任を果たす目的および範囲で、法律にしたがい、その財政および活動を監査すること。

第111条【監査院】
1 共和国は、監査院を、役所の活動に対する、独立かつ最高の検査機関と定める。
2 監査院は、国会総会が票決により、候補者から得票数の順に選出する、法律に定める数の監査委員で構成すること。監査委員の兼職は禁止する。
3 監査院は、役所の行為に関して、合法性の事前審査、および予算・運営に対する事後の監査を行なうこと。また法律にしたがい、役所が補助する団体の、財政・運営に対する監査に参加すること。国会は、法律に定めて監査院の業務を追加してよい。
4 監査委員には、その業務に必要なすべての文書・データ・報告を得る権限をみとめる。
5 監査院は、3項の業務のほか、毎年度、国会および民びとに報告書を提出すること。そこで、違反または背任と監査院が判断した行為があれば、国会に直接報告すること。

第112条【決算】
 決算は、毎会計年度の終了後6ヶ月以内に、監査院の検査報告とともに、内閣が国会に提出すること。

第113条【護民官
1 護民官に、依頼に応じ、または独自に役所を調査し、また法律にしたがって役所に助言する権限をみとめる。護民官は、違法ないし背任行為を認めれば、それを裁判所に訴えること。
2 前項の目的のため、国会総会は、法律に定める数の護民官を票決により、候補者から得票数の順に選出すること。
3 護民官には、裁判所または役所の会議に出席する権利、および裁判所または役所の、議事録その他のあらゆる文書を閲覧する権限をみとめる。すべての裁判所、役所および役人は、護民官が要求する、あらゆる文書・データ・報告を提出すること。この義務を、護民官の監視的権限のもとにあるすべての者も果たすこと。
4 検察官は、要求があれば護民官に協力すること。
5 護民官の権限および仕事の手続きを、法律に定めること。また国会は、議決により護民官の業務を追加してよい。


第8章 地方自治

第114条【自治権の保障、自治の原則】
1 共和国は、すべての市町村および道・州に、憲法および国法の範囲内で独立かつ完全な自治権をみとめる。
2 各自治体は、その住民による自治を保障すること。とくに市町村の住民には、民主的かつ直接的な住民集会による意思形成と、住民投票による立法および意思決定の、実効力ある権利をかならず保障すること。

第115条【自治体】
1 自治体の廃止または新設は、かならず国会の議決によること。
2 自治体の境界を変更するための規則は、法律に定めること。

第116条【地方議会】
1 地方議会を、各自治体の住民の代表機関と定める。議会の構成や組織は法律に定める基準を守り、その会議は、法律に定める例外をのぞき、公開すること。
2 地方議会の議員は、それぞれの住民が、憲法および法律に定める基準にしたがい、直接選挙によって選ぶこと。議員および選挙人の資格および選挙の方法は、憲法第48条にしたがい、法律に定めること。
3 議員の資格を失わせる場合の規定は、法律に定めること。
4 議員の任期は、法律に定めないかぎり、4年とする。

第117条【条例】
1 地方議会に、議決によって条例をつくる権利をみとめる。
2 条例は、法または国会の議決に反しないかぎり有効とする。
3 条例を議決する方法に関する基準は、法律に定めること。

第118条【地方の治政】
1 市町村は、市町村長を長とする市役所または町村役場が、また道・州は、道・州知事を長とする道・州政府が治めること。
2 市町村議会は、法律に定める基準にしたがい、市町村長および役人の選任方法を条例に定めること。
3 道・州知事の選出は、住民の直接選挙により、選挙人・被選挙人の資格、および選挙の方法は、法律に定めること。
4 前2項について、第48条が禁じる差別を、定めてはならない。

第119条【市町村連合】
 業務の効率化・最適化のため、条例に定めて、複数の市町村で道・州とは別の連合体を形成してよい。

第120条【地方財政
1 地方財政は、各自治体の機能を遂行するために十分な資力を確保すること。
2 前項の目的のため、各自治体に独自に税を徴収し、国からの交付金を得る権利をみとめる。
3 自治体が徴収する税と国税、および自治体と国の財政における関係は、法律に定めて調整すること。

第121条【国と自治体の関係】
1 自治体の組織が満たすべき基準、およびその権限は、法律に定めること。
2 国会が、ひとつの自治体のみに適用する特別法は、法律にしたがい、その自治体住民の投票において、その過半数の同意を得ないかぎり無効とみなす。
3 そのほか、自治体間あるいは自治体と国の間の紛争を調停するための規則は、法律に定めること。


第9章 憲法改正

第122条【総則】
1 この憲法は、一部、または全部をいつでも改正してよい。
2 ただし、憲法改正の審議は、とくに慎重に行なうこと。

第123条【憲法改正の手続き】
1 憲法改正案は、さきに民議院に提出すること。
2 民議院は、その案を複数の法律案に分割してよい。また必要ならば章・節・条文・項目・脚註の番号を変更し、それらの順序を入れ替えて形式の統一を保つこと。
3 民議院は、前項の手続きを経た憲法改正案を承認し、民びとぜんたいに広報したら、ただちに解散すること。
4 解散の後、民議院議員選挙をへて新たに民議院を招集した時点で国会総会を開き、承認された憲法改正案を議決すること。議決には、総議員の3分の2以上の賛成を得ること。
5 議決を経た憲法改正案を、国会は国民に知らせ、その承認を受けること。承認は国民投票により、投票者の過半数の賛成を得ること。

第124条【公布】
1 第123条に定める手続きと承認を経て改正された憲法を、大統領は、主権者である共和国の民びとの名のもとに、ただちに公布すること。
2 改正された憲法は、政府の広報として出版・公開した時点から有効とする。
3 憲法改正前からの法律で、改正された憲法に合わなくなったものは、新しい法律が作られるまで有効とする。ただし、国会の議決により廃止された場合をのぞく。


第10章 移行規定

第125条【明治天皇制の廃止】
1 宮内庁は本憲法の発効と同時に廃止する。
2 皇室典範は本憲法の発効と同時に失効する。
3 皇籍および戸籍は廃止し、住民登録は市町村の専管事項とする。皇族には、憲法に定めるすべての基本権を保障し、社会のあらゆる局面における差別を禁ずる。
4 皇室財産の全部または一部は、国会総会の議決にしたがい、天皇および皇族に、その私有財産として分与する。また、そのさいに課税しない。

第126条【日本国憲法からの移行】
1 この憲法を公布とどうじに参議院は解散し、30日以内に第一期の連邦院議員の総選挙を行なうこと。その半数の者の任期は3年とする。
2 連邦院が成立するまでの間、衆議院が国会としての権限を行なうこと。
3 連邦院が成立すると同時に、衆議院は解散し、30日以内に民議院議員の総選挙を行なうこと。

第127条【弘務員に関する移行規定】
 この憲法施行のさいに現職の国務大臣、議員、裁判官その他の弘務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められている者は、法律に定める場合をのぞいては、この憲法施行を理由としてその地位を失うことはない。ただし、この憲法にしたがい、後任者が選挙または任命されたときは、とうぜんその地位を失う。

自民党改憲案考

明治憲法の起草者には、時代や君主制守旧派の抵抗、彼ら自身の武士階級という出自といった制約の中で、欧米列強にも引けを取らない世界の先端をいく水準の憲法を提示しよう(それは背伸びであったかもしれないし、不平等条約改正をにらんでのパフォーマンスという面ももちろんあるだろう。だからこそ、その後山県有朋などによっていくつもの抜け穴が開けられた)という気概があったことは認めなければならないだろう。だからこそ、欧米諸国の「まだ早すぎるのでは」という危惧に逆らい、範を取ったプロイセン憲法よりも君主権をむしろ弱め(=立憲主義の色彩を強め)、あまり知られていないが大臣の副署が伴わない天皇の勅令を無効とする規定を入れたのだ。また伊藤博文じしん、立憲政治を自ら(官民一致の方向でだが)実践すべく政友会を組織している。その継承政党である自民党改憲グループに、21世紀の世界に堂々と開陳できる最高水準の憲法を作ろう、という気概は果たしてあるだろうか;

 明治憲法が制定される際、枢密院議長の伊藤博文と文相の森有礼(ありのり)の間で論争があった。草案にある臣民の「権利」を「分際(責任)」と改めるべきだとの修正案に伊藤は「そもそも憲法創設するの精神は、第一君権を制限し、第二臣民の権利を保護するにあり」と反論した▼臣民の責任を列挙するなら制定の必要はない。主権者である天皇の権力を制限し、国民の権利を守ることが憲法創設の精神であると明言したのだ▼憲法の役割は、国家権力に歯止めをかけることである、という立憲主義の精神を、明治憲法の起草者が正確に理解していたことは新鮮な驚きだった▼衆院選で圧勝した自民党安倍晋三総裁は、改憲の手続きを定めた憲法九六条を日本維新の会などと連携して見直す考えだ。強い反対が予想される九条を後回しにして発議の条件である「三分の二条項」から手をつける戦術のようだ▼自民党がかねて主張してきた九六条改正案を、憲法学者小林節慶応大教授は「何をするか分からないのに危険なピストルを渡せるだろうか?」と自著『「憲法」改正と改悪』で批判しているが同感だ▼国防軍ばかりが注目された自民党憲法改正草案は、基本的人権を守る姿勢が大きく後退し、憲法が国家権力を縛る道具であることをまるで理解していないと思わせる条文が並ぶ。明治時代に戻って勉強し直してほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2012122002000120.html

アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第8章(3)

統治

 州パンチャーヤットは、州の立法部である。とうぜん一院制で、その領域内の全権を治め、前に挙げたような、憲法に定められた州の権能に関係する法律を定める。
 パンチャーヤットは、その州の元首を務める総裁を選任する。
 州パンチャーヤットの業務は、例外なく、その領域ごとの言語によって遂行される。
 完全な権能の分離が、立法部と執行部の間におかれるべきだ。州パンチャーヤットは、各部門を担当する長官あるいは行政官[コミッサール]を任命する。これらの長官はパンチャーヤットに対してすべての責任を負うが、州パンチャーヤットの構成員から選ぶことはできない。
「執行部の長と議会の長とが実質的に同一で、前者がはなはだしく、あるいは過度に高給を食むイギリスのようなところでは、まことの責任は消滅し、策略と陰謀の政党政治が跋扈し、議会は廉潔でありえない。1」 パンチャーヤット構成員の職務は、ことばの真の意味での名誉職でなければならない。
 長官の任期は3年とし、通常、新しいパンチャーヤットによって交代させられることはない。ただし、非効率や収賄を理由とする場合は別である。
 長官は党派の利害や派閥争いによって選ばれてはならず、州のもっとも優れた人材を代表しているべきだ。長官の人数は州の規模によって決まるが、5人を下回り、また9人を超えてはならない。

1 ‘Outline Scheme of Swaraj’, Deshbandhu Das and Dr. Bhagvan Das,. Note to Chapter VI

アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第8章(2)

(p.90)
 将来の憲法における、州の名称はつぎの通り;

    州                      言語
1.アジメール・マーワラ ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
2.アーンドラ      ・・・・・・ テルグ語
3.アッサム       ・・・・・・ アッサム語
4.ビハール       ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
5.ベンガル       ・・・・・・ ベンガル語
6.ボンベイ(市)    ・・・・・・ マラーティー語・グジャラート語
7.デリー        ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
8.グジャラート     ・・・・・・ グジャラート語
9.カルナータカ     ・・・・・・ カンナダ語
10.ケーララ      ・・・・・・ マラヤーラム語
11.マハーコーシャル  ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
12.マハーラーシュートラ・・・・・・ マラーティー語
13.ナーグプル(ベーラルを含む)・・・ マラーティー語 
14.北西辺境州     ・・・・・・ パシュトー語
15.パンジャーブ    ・・・・・・ パンジャーブ
16.シンド       ・・・・・・ シンド語
17.タミル・ナードゥ  ・・・・・・ タミル語
18.連合州       ・・・・・・ ヒンドゥスターニー語
19.ウトカル      ・・・・・・ オリヤー語

 以上の区分は現在の国民会議の州構成に沿っており、ちがいはナーグプルとヴィダールバ(?)を一州にまとめていることだけだが、これにははっきりした理由がある。国民会議構成州の名称もそのまま残しているが、将来の憲法のもとで、州境までいまの国民会議の領域にきっちり対応させる必要はない。

(p.91)
たとえばいくつかの州が、すべてではないにせよ全インド連合に加盟したら、言語境界は各州とよく相談した上で引き直すべきだ。げんざいの連合州も、便利のため分割して東西二州に分けるのがよいだろう。しかしながら、これらの詳細はすべて、インド憲法会議が任命する特別委員会へ信託されねばならない。また必要に応じ、特定地域の人びとの要求を、成人の普通選挙にもとづく住民投票によって認定すべきである。

アガルワール:自由なインドのためのガンディー主義憲法 第8章(1)

(p.88)
州政府

 地区パンチャーヤットおよび市政評議会は、おのおのの代表を州パンチャーヤットに派遣する。したがって、その[権能の]強さは、とうぜん州ごとに異なる。小さい州では、地区パンチャーヤットおよび市政評議会の各代表と並んで、ひとりかそれ以上の代表者を州政府へ送ることにしてもよい。
 州パンチャーヤットの任期は3年とし、通常年2回議事を行なう。

機能

 州パンチャーヤットの機能は次の通り;

(a) 地区パンチャーヤットの活動を指導・監督・調整し、会計を監査する。
(b) 非常事態に備え、地区警防団予備隊を運営する。
(c) とくに高等技術教育と研究のため、大学教育を組織・運営する。
(d) 州内に、よく行き届いた交通および通信網を整備する。交通手段は州パンチャーヤットの所有・管理とする。
(e) 適切な灌漑施設を設置する。

(p.89)
(f) 非常時に、飢饉への緊急支援を行なう。
(g) 州立協同組合銀行を運営し、地区パンチャーヤットへ低利融資を供与する。
(h) 州内の天然資源を開発し、必要ならば「枢要」産業を管理する。

州境

 州どうしの境界線は、おもに言語圏にもとづき確定するのがよい。いうまでもないが、現存する州境は歴史的事由によったもので、その背景に科学的配慮はまったくない。多くは、構成に調和と均質さとが欠けているのだ。それゆえ、州の編成は言語にもとづき見直さねばならない。これは絶対に必要である。なぜなら、立法・執行・司法・教育に関するあらゆる業務は州の言語を通じて行なうべきで、二つ以上の言語をかかえる州は、そこで多くの困難を来す。さらに、最高水準にいたる教育指導のなかだちとして、学生たちの母語のほかに適切なものはありえない。二言語あるいは他言語の州で、母語による教育伝達はおよそ実施不可能なのである。この観点からすると、もっとも大幅な再配置が必要なのは、ボンベイ州・マドラス州・中央州であろう。