2008-04-21から1日間の記事一覧

書評 関曠野「歴史の学び方について」、窓社

どうひいき目に見ても、関曠野は現代日本最高の、かつ最も過少評価され遠ざけられている思想家の一人である。私も若い頃から現在まで、そのことばに触れては大いに影響と恩恵を受けた。ただ、関のことばは時間をかけて思索され練り上げられているだけに、な…

書評「唯心論と唯物論」L.フォイエルバッハ、桝田啓三郎訳、角川文庫

学生時代、「さいきんフォイエルバッハを読んでる」と言うと、マルクス主義者を自認する友人に怪訝な顔をされた。曰く、「フォイエルバッハ?なんで今さら。マルクスにあんなに批判されてるじゃないか」。その言にも呆れたけれど、なんで呆れてるのかをきち…

書評「逝きし世の面影」渡辺京二、平凡社ライブラリー

本書はもともと、福岡の葦書房から美しく重厚なハードカバー本として出版された。ところが同社が倒産してしまい(したがって石牟礼道子のエッセイ集「花をたてまつる」も絶版になってしまった。選ばれた文章といい装丁といい、名作だけに残念きわまりない)…

書評「日本文学史」小西甚一、講談社学術文庫

日本文学史=つまらない、と相場は決まっている、とばかり思っていた。理由はかんたんで、書き手や教え手がえこひいきやヨイショをするからだ。日本文学は世界に類を見ないユニークで優れたもの、という理由なき前提があり、その結論に向かって思い入れたっ…

書評「新憲法の誕生」古関彰一、中公文庫

日本国憲法に関心のある人には、ぜひ読んでほしい一冊。 明治憲法から日本国憲法への改正過程と、そこで誰のどんな思惑が、どうその条文に影響したのか、が克明に解き明かされている。また、当時の世論や憲法を取り巻く状況も、印象的なエピソードを通して活…

CD評「バベットの晩餐会」

残念ながら日本語版は現在品切れの上に稀少、入手可能なのは英語版DVDだけだが、それでもやはりお薦めしたい一本。原作は、20世紀最高のストーリーテラーとも讃えられるアイザック・ディネーセン(カレン・ブリクセン)の短編。同じデンマーク人のガブリエル…

平和友好条約考

日本とアメリカの間には、友好が存在しない。正確には、友好条約が存在しないらしいのだ。日本国との平和条約(サンフランシスコ平和条約)は「戦争状態はこれで終わりだよー」というお約束=講和条約であって、対等な友好関係をどう築くか、といった内容は…

ドレミファ考

結論からいうと、音階の階名「ドレミファソラシド」を修正することを提案したい。理由1: レはre、ラはlaなのだが、日本語はrとlを区別しない。もちろん、これは日本語が言語として劣っている等々、といった問題ではない。たとえばヨーロッパ語圏の人間も、…

シンタクラース考

またシンタクラース(聖クラウス)がやって来た。オランダ人にとってはクリスマスより重要、と言われる日。しかし私はこの日が嫌いだ。はじめてシンタクラースのパレードを見た時の違和感はよく覚えている。白いひげを生やした白人(ほんとうはトルコの人ら…

天皇家は代々仏教徒だった?泉涌寺の謎

京都東山の泉涌寺には、天智天皇〜昭和天皇に至る、歴代の天皇の位牌がある、ご神体じゃなく位牌が。そしてお寺の敷地内には、鎌倉時代の御堀河院から孝明天皇(明治の前。大政奉還の時に幕府の味方だったため暗殺された疑惑が晴れない)までの陵墓もある。…

文民統制考

東奥日報社説・2006/12/18 http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/sha2006/sha20061218.html 文民統制がますます重要/防衛省昇格 防衛庁の「省」昇格関連法が十五日成立した。来年一月九日には内閣府の外局となっている防衛庁が防衛省に、防衛庁長官は防衛相…

陰謀論考

「9.11はCIAの自作自演」「モサド(イスラエル情報部)は9.11を知っていた」「ブッシュは開戦前、イラクに大量破壊兵器がないことを知っていた」といった疑念への殺し文句は決まっている。「それは陰謀論に過ぎない」。それは、世界的な悪の共同体など存在し…